巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

教父学(Patristics)

「宗教は嫌いだけど、イエスは好き。」ーー〈宗教〉vs〈イエス〉という二分法と現代マルキオン主義グノーシス思想についての考察

目次 大ヒットのビデオ「なぜ宗教は嫌いだけどイエスは好きなのか」 Religionという言葉はいつ頃からキリスト教会の中で敵対視されるようになったのか? バロン司教の分析 現代マルキオン主義グノーシス思想のエヴァンジェリカル界台頭

パウロにおけるイエス・キリストのピスティスの意義ーーロマ 3 : 22、26 ; ガラ 2 : 16 ; 3 : 22 ; フィリ 3 : 9 の釈義的考察(原口尚彰氏論文)【「イエス・キリストの信実」/主格的属格説】

目次 はじめに I. 語学的考察 1. πίστις の語義 2. πίστις に係る属格表現 2.1 事物を表す名詞の属格 2.2 人格的存在を表す名詞の属格 2.2.1 神的存在を表す名詞の属格 2.2.2 人間を表す名詞の属格 2.2.3 イエス・キリストを表す名詞の属格 II. 釈義的考察 1…

ユスティノスのストア哲学批判(水落健治氏、明治学院大学)【初代教会とギリシア哲学】

ストア哲学の流れ(出典) 目次 はじめに ユスティノスとは誰か? 『ユダヤ人トリュフォンとの対話』1.4 批判の対象ーー三種類の区分 ①セネカの主張 ②ストア派の主張 ③中期プラトン派の主張 ユスティノスの批判 古ストア派、中期ストア派、新ストア派

クリスチャンの礼拝と祈りはなんと奥が深いことでしょう!

出典 「われわれは、そこが天国なのか地上なのか分からなかった、、、ただ一つ確かなのはそこにおいて神が人間たちの間に宿っておられるということだ。」キリスト教会の典礼の様子を目撃したウラジミール使節の証言 目次 毎日が学びと発見 ビザンティンの奉…

全時代、全世界の聖徒たちと共に、「主の祈り」の広さ、長さ、高さ、深さを味わおう。

ロシア人修道士の歌うアラム語での「主の祈り」 Aboon Dbashmayo (Our Father who art in Heaven, 天にいます私たちの父よ)

デリダの 「ポスト近代宗教」 の中に存在する深い内的緊張ーーポストモダン的グノーシス主義の内実(ジェームズ・K・A・スミス)【ポスト近代と福音宣教その②】

〈メシアニズム(messianisme;キリスト教などの特定宗教)〉と〈メシア的なもの(le messianique)〉の区別を導入したジャック・デリダ(出典) James K.A. Smith, Beyond Atheism: Postmodernity and the Future of God(2010年10月カナダ、オタワ大…

「高教会的」カルヴィニズムは可能か?ーーフィリップ・シャフ、ジョン・ネヴィンのマーサーズバーグ神学の試みに対する東方正教会の批評

ジャン・カルヴァン(出典) 目次 マーサーズバーグ神学に対する新たなる関心と復興 オランダ改革派とドイツ改革派の性格の違い マーサーズバーグ神学の特徴 聖餐における実在の教義の回復 低教会プロテスタンティズムに対する矯正 ネヴィンの当惑 行き過ぎ…

典礼の交唱(アンティフォナ)ーー天の韻律のこだま(by トーマス・ハワード)

典礼の空間においては、すべてのものが意味を持ってくる。(出典) Thomas Howard, Evangelical is Not Enough: Worship of God in Liturgy and Sacrament, Ignatius, 1984 (抄訳) 〈主があなたと共におられますように。"The Lord be with you."〉 〈そし…

「聖書のみ」というプロテスタント教理は間違っているのだろうか?ーーロバート・アラカキ氏(東方正教会)とデイビッド・ロクサス氏(プロテスタント教会)のやり取りを読んで。

目次 はじめに ロクサス氏(新教)からアラカキ氏(正教)への問いかけ アラカキ師の指摘する「聖書のみ」の認識論的問題点 私の解釈を「誰が」正しいと定めるのだろうか?ーー「聖書のみ」と権威の所在

福音主義クリスチャンが教父文書に親しみ研究する際に留意すべき事(by ハンス・ボースマ、リージェント・カレッジ、教父学)

目次 福音主義者たちの間にみられる目覚ましい進展 注意点その1 注意点その2

アンソニー・ボリーソフ神父(ロシア正教会)とジョン・ミルバンク氏(聖公会神学者)との対談記事

モスクワ神学アカデミー(出典) 目次 モスクワでの対談 〔補足〕改革派神学はラディカル・オーソドクシーをどう見ているか

「聖書のみ」というプロテスタント教理に対するクリティカルな論考のご紹介

目次 はじめに 第五章「聖書のみ」その前提 序 「充分」とは言うが、どのように充分なのか 新しい考え方 自己確証される正典 (カノン) 聖書による聖書の解釈 「虎の巻 (answer book)」としての聖書 思想としてのキリスト教

なぜ解釈学を学ぶのか?(アンソニー・C・ティーセルトン、ノッティンガム大)

Anthony C. Thiselton, Hermeneutics: An Introduction, chapter 1, sec.1. Toward a Definition of Hermeneutics(拙訳) 解釈学は、私たちがいかにテキストを読み(特に自分たちとは時間や生活の文脈を隔てたところで書かれたテキストを取り扱う際)、理解…

黙示録2章のニコライ派に関し一般に信じられている〈神話〉についてーー「語根にかかわる誤謬(root fallacy)」の事例

ニコライ派ーーキリスト教内における権力とコントロール(ヘブル的ルーツ運動に関与するMidrash Monthlyのサイトより)Nicolaitan | Midrash Monthly 目次 はじめに 初代教会の証言 現代の実例 結語 〔一次資料〕ニコライ派に関する古代および中世文献 〔補…

過度の単純化/還元主義/誤前提から生み出される解釈的弊害を避けるために②ーー神学と哲学との関係についての諸類型(ミラード・エリクソン『キリスト教神学』)

「ヘブライ的思考 vs ギリシャ的思考」(トーラー遵守を強調する「ヘブル的ルーツ運動」団体The Way Biblical Fellowshipの教え) 目次 神学と哲学との関係についての諸類型(ミラード・エリクソン) 神学と哲学の間には全く関係がないとする立場 哲学は神学…

聖書的liturgyの意味と霊性の回復を求めてーー公的礼拝における詩篇賛美(瀧浦 滋師の論文紹介)

はじめに 冒頭の記事でも指摘されているように、近年、比較的若い世代の「伝統(教会)回帰」が目立ってきているそうです。コンテンポラリーな礼拝環境の中で飢え渇きを覚え、彼らは自分たちの古のルーツや伝統を求め旅を始めています。

原ニケア信条(325)およびニケア・コンスタンティノープル信条(381)について(by E・ケアンズ)

コンスタンティヌス帝を描いたイコン。周囲に立っているのは第一回ニケア公会議(325)に出席した司教たち。彼らが掲げているのは、381年に定められたニケア・コンスタンティノープル信条。(出典) 目次 なぜ信条(Creed)の必要性が生じたのか? 三…

永遠なるものと時間的なものーーキリスト者の歴史観と希望について

キリストの世界において、遠方が裂け、開く。天穹が割れ、開く。 「キリスト教的意識は、永遠なものが時間の中にいりこむことができることを究極まで承認したことによって、歴史を、歴史の観念を与えたのであった。」と異色のロシア人哲学者ニコライ・ベルジ…

予型論について(『ベイカー福音主義神学事典』他)

目次 予型論について(『ベイカー福音主義神学事典』) 予型/予型論について(Type, Typology) 解釈的重要性 現在の論争 〔参考文献〕 予型論について(『ティーセルトンのキリスト教神学事典』) 〔比較研究のための資料〕オリゲネスのローマ書解釈ーオリ…

あゝ教会の公同性!

広く、どこまでも広く、 遠く、そこには果てがない。 「我は、、聖なる公同の教会、、を信ず。」 Πιστεύω εις,, αγίαν καθολικην εκκλησίαν. Credo in,,sanctam Ecclesiam catholicam. ーー使徒信条 「わたしは、聖なる、普遍の、使徒的、唯一の教会を信じま…

伝統・言い伝え(παράδοσις, tradition)について(『ティーセルトンのキリスト教神学事典』他)

「教えられた言い伝え("traditions")を守りなさい」(2テサ2:15b)ーー教会の言い伝え・伝統とは何か? 目次 Traditionについて(『ティーセルトンのキリスト教神学事典』) Traditionについて(『ベイカー福音主義神学事典』) 伝統/伝承とは 聖書…

「使徒的」であることについて

「わたしは、聖なる、普遍の、使徒的、唯一の教会を信じます。」 Πιστεύω..είς μίαν, αγίαν, καθολικήν καί αποστολικήν Έκκλησίαν. Credo..et unam, sanctam, catholicam et apostolicam Ecclesiam. ーーニケヤ・コンスタンティノープル信条(381年) 私…

使徒信条について(『ベイカー福音主義神学事典(Evangelical Dictionary of Theology)』より)

目次 使徒信条について 【参考資料1】古ローマ信条のラテン語訳とギリシャ語訳 【参考資料2】カトリック教会、聖公会、プロテスタント教会それぞれの訳文 ① カトリック教会 ② 聖公会(英国国教会) ③ プロテスタント 【補足資料】

黙示と新約聖書の神学(by ジョージ・エルドン・ラッド)

目次(小見出しは読みやすさを考え訳者が任意に作成したものです。) エルンスト・ケーゼマンの論文、大きな反響を呼ぶーー黙示への関心のルネッサンス 黙示思想における終末論的二元論について 「この時代」と「来るべき時代」 なぜ彼らは、歴史の中での神…

オスカー・クルマン(Oscar Cullmann)について(『ベイカー福音主義神学事典(Evangelical Dictionary of Theology)』他)

目次 オスカー・クルマン(『ベイカー福音主義神学事典』) オスカー・クルマン(『ティーセルトンのキリスト教神学事典』) 【比較研究のための補足資料】ジェームズ・バー著『時を表す聖書用語(Biblical Words for Time)』目次

彼は「越境」しなければならなかったのか?――カルバリー・チャペルから東方正教会への旅路【書評】

目次 はじめに 著者のセブンスデー・アドベンティスト時代 ファンダメンタリズムからカリスマ派へ 福音主義教会のカオスの中で 真理はモザイク状のものなのか? 「あなたに与えられている光」に真実に生きればそれでいい? 定義のない看板文字 彼は「越境」…

イグナティオスによるローマ人への手紙【AD2世紀前半】第7章――わが唯一の望み

第1-5章はココ。 6章はココ。8章-最終章はココ。 第7章 わが唯一の望み この世の君は、わが心を無理にも運び去り、こうして、神へのわが決心をぐらつかせ、腐敗させようとしています。ですから〔現在、ローマにいる〕あなたがたの内、誰も、〔この世…

新約聖書はどのように旧約を用いているのか?(by E・アール・エリス)

目次 新約聖書解釈における諸前提 1.概要 2.歴史としての救済 3.予型論(Typology) 4.その他の諸前提 この章の文献目録

ディダケー(12使徒の遺訓:Διδαχή των Δώδεκα Αποστόλων)第16章 終わりの時

ΙΣΤ' 1. Γρηγορεῖτε ὑπὲρ τῆς ζωῆς ὑμῶν·οἱ λύχνοι ὑμῶν μὴ σβεσθήτωσαν,καὶ αἱ ὀσφύες ὑμῶν μὴ ἐκλυέσθωσαν,ἀλλὰ γίνεσθε ἕτοιμοι·οὐ γὰρ οἴδατε τὴν ὥραν,ἐν ᾗ ὁ Κύριος ἡμῶν ἔρχεται (Ματθ. 24, 42-44. Λουκ. 12,35). あなたがたの人生の歩みによくよく注…

ディダケ―(12使徒の遺訓:Διδαχή των Δώδεκα Αποστόλων)第15章 司教や助祭について

ΙΕ' 1. Χειροτονήσατε οὖν ἑαυτοῖς ἐπισκόπουςκαὶ διακόνους ἀξίους τοῦ Κυρίου,ἄνδρας πραεῖς καὶ ἀφιλαργύρους (Α΄ Τιμ. 3,3.8)καὶ ἀληθεῖς καὶ δεδοκιμασμένους·ὑμῖν γὰρ λειτουργοῦσι καὶ αὐτοὶ τὴν λειτουργίαντῶν προφητῶν καὶ διδασκάλων. それゆえ、…