巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

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アビゲイル・ファヴェール教授の新刊書『The Genesis of Gender: A Christian Theory 』に関するすぐれた書評

 

アビゲイル・ファヴェール教授の新刊書『The Genesis of Gender: A Christian Theory (ジェンダーの起源:キリスト者の考察)』(2022年)が話題を呼んでいます。

 

 

私は数か月前に、彼女の自伝「Into the Deep: An Unlikely Catholic Conversion」(2018)を読みましたが、本当に得るところの多い、すばらしい著書でした。

 

原理主義的なエヴァンジェリカル教会環境で生育し、大学の時にフェミニズム思想に出会い、彼女は「これこそが女性としての自分の尊厳を高めてくれる思想だ」と全面的に受け入れました。当初は従来の福音派聖書解釈をフェミニズムのレンズで「再解釈」し、家父長制に毒されてしまっている自分たちのキリスト教を「改善・修復」させていこうというスタンスでした。福音主義キリスト教が「主」、フェミニズムが「副」という捉え方です。

 

しかしながら次第に、彼女の中でこの「主」と「副」の関係が逆転してゆくようになっていきます。自分の宗教がキリスト教信仰ではなく、「フェミニズム教」になっていったのです。こうして神信仰自体が彼女の中でもはやなんら意味をもたないものとなっていきました。ほどなくして彼女は不可知論者になりました。

 

そんな中、不可思議かつ驚くべき神の摂理の中で、彼女は(フェミニストの状態のまま)カトリックに改宗することになります。そこから神の御手が力強く動き始め、彼女はカトリシズムの提示する伝統的セクシュアリティ、男女観、ヴェール、サクラメント観等を一つ一つ経験してゆくことになるのです。ここらへんの描写が本当に感動的です。

 

現在、ノートルダム大学で教鞭をとっておられるファヴェール教授のこの新刊書は、昨今なぜ若い子たちが「ジェンダー・ディスフォリア」に陥っているのか、その背景について、自身の体験および学術的考察の両方を交え、説得力のある解説を行っています。

 

彼女によれば、子どもたちがトランスジェンダー手術という選択をするよう誘惑される主因は、①フェミニズムと②身体的自己嫌悪、の二つだとしています。興味深いのは、前者が19世紀に端を発する広範な哲学的スタンスであり、後者は否定的な自己認識の形をとるソーシャルメディア主導の病理であるにもかかわらず、この二つが相互に分かちがたく結びついている、という彼女の分析です。

 

またファヴェール教授は、「一般的に言って、フェミニストがトランスジェンダー活動家たちに反対するのは、後者がジェンダーを不安定化させることで、フェミニズムの成果を損なうからだ──そう思われがちです。しかしながら真相はもっと複雑でもっと厄介なものなのです」と鋭い指摘もしています。

 

ナショタハウス神学校教授ハンス・ボースマ司祭が、本書に関する非常にすぐれた書評を書いておられます。PDFで3ページという短いレビューですので、英語を解される方はぜひお読みになってみてください。本書のすぐれた点および若干の問題点について簡潔・明瞭な書評がなされています。

 

“Toxic Feminism.” Review essay of Abigail Favale, The Genesis of Gender: A Christian Theory. Touchstone: A Journal of Mere Christianity 36/3 (May/June 2023): 42–44.

https://www.hansboersma.org/articles-1/toxic-feminism

 

参考動画

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