倫理的価値は果して客観的か。――今こそ手に取りたいC・S・ルイスの『人間の廃絶』
C・S・ルイス研究者として有名なマイケル・ワード神父(オックスフォード大学上級研究員)が数か月前、After Humanity: A Guide to C.S. Lewis’s The Abolition of Man (仮:人間性なき時代――C・S・ルイスの『人間の廃絶』案内」という書を出版されました。『人間の廃絶』は、第二次世界大戦中、ルイスが行なった倫理に関する講義シリーズを基に執筆されたものです。
ルイスは講義シリーズの中で、「果たして倫理的価値は客観的であるか否か」という難解な問いに取り組んでいます。何かが正しい、あるいは間違っていると言う時、私たちは自分たちの外側に在るリアリティーを認識しているのでしょうか。それともそれは単に私たちの主観的感情を伝えているのに過ぎないのでしょうか。
第一級のキリスト教弁証家として名をとどろかせているルイスですが、ワード神父の解説によると、『人間の廃絶』の中においてはルイスは、純粋に哲学的観点から事の真相を論じています。主観主義のいばらが倫理事項を押しふさいでしまう時、人間は次第に人間性を喪失し、ついには野獣のような存在になってしまうというルイスの警告がすでに1943年という早い段階でなされていたというのはある意味、驚くべきことではないかと思います。
時代を見通す鋭い眼を持ち、預言的警告をなしたルイスの本著は今日に生きる私たちにとっての必読書ではないかと思います。ていねいな案内書を出してくださったワード神父にも感謝です。
ー終わりー
↓『人間の廃絶』朗読