望みの道を歩く巡礼者仲間へ
「ぼく、みんなまちがったことをしてしまった。」バスチアンはいった。「みんな、考えちがいをしていたんです。月の子は、ぼくにたくさんのものをくださったのに、ぼくはそれでもって、自分にもファンタージエンにも、わるいことばっかりしてしまったんです。」
アイゥオーラおばさまはバスチアンを長いこと見つめていたが、やがていった。
「いいえ、わたしはそう思わないわ。あなたは望みの道を歩いてきたの。この道は、けっしてまっすぐではないのよ。あなたも大きなまわり道をしたけれど、でもそれがあなたの道だったの。どうしてだか、わかるかしら? あなたは、生命の水の湧きでる泉を見つければ、帰れる人たちの一人なの。そこは、ファンタージエンの一番深く秘められた場所なのよ。そこへゆく道は、簡単ではないわ。」
そしてしばらく口をつぐんでから、またことばをついだ。「そこへ通じる道なら、どれも、結局は正しい道だったのよ。」
それを聞くと、バスチアンはいきなり泣きだした。なぜなのか、自分でもわからなかった。胸の中で固くなっていたわだかまりがとけ、涙になって流れだしたような気持だった。すすりあげ、しゃくりあげ、あとからあとから、とめどもなく涙が流れた。アイゥオーラおばさまはバスチアンを膝に抱きあげ、やさしくやさしくなでてくれた。バスチアンはおばさまの胸の花の中に顔をうずめて、思う存分、泣いた。泣いて泣いて、疲れるまで泣いた。
(『はてしない物語 下 (岩波少年文庫)』(ミヒャエル・エンデ, 上田 真而子, 佐藤 真理子 著)より)