巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

イグナティオスによるスミルナ人への手紙【AD2世紀前半】第9章-最終章

アガペー(愛餐;ἀγάπη)ローマのカタコンベ壁画(出典

 

目次

 

第1章はココ。第2-8章はココ

 

第9章 司教を敬いなさい

 

それゆえ、私たちは沈着さを取り戻し、未だ機会があるうちに神に立ち返ることがふさわしいのです。神を敬い*1、司教を敬うことは望ましいことです。

 

司教に敬意を示す人は、神によって称賛されています。他方、司教の知らぬところで勝手に振る舞う人は、実際、悪魔に仕えているのです。ですから、すべてのことが恵みを通し、あなたがたに満ち溢れるようにしなさい。なぜならあなたがたは尊い存在だからです。

 

あなたがたはあらゆる事において私を元気づけてくれました。〔同じように〕イエス・キリストもあなたがたを元気づけてくださるでしょう。また私がいる時にも不在の時にも、あなたがたは愛を示してくれました。神があなたがたに報いてくださいますように。主のゆえに全ての事を耐え忍びなさい。そうすればあなたがたはやがて主に到達するでしょう。

 

第9章原文 

IX
1 Εὔλογόν ἐστιν λοιπὸν ἀνανῆψαι ἡμᾶς, ὡς ἔτι καιρὸν ἔχομεν εἰς θεὸν μετανοεῖν. καλῶς ἔχει, θεὸν καὶ ἐπίσκοπον εἰδέναι. ὁ τιμῶν ἐπίσκοπον ὑπὸ θεοῦ τετίμηται· ὁ λάθρα ἐπισκόπου τι πράσσων τῷ· διαβόλῳ λατρεύει.

2 πάντα οὖν ὑμῖν ἐν χάριτι περισσευέτω· ἄξιοι γάρ ἐστε. κατὰ πάντα με ἀνεπαύσατε, καὶ ὑμᾶς Ἰησοῦς Χριστός. ἀπόντα με καὶ πάροντα ἠγαπήσατε. ἀμοιβὴ ὑμῖν ὁ θεός, δι ̓ ὃν πάντα ὑπομένοντες αὐτοῦ τεύξεσθε.

 

第10章 彼らの親切を想う

 

フィロンと、レウス・アガトプスを、神の奉仕者*2としてあなたがたは丁重に受け入れてくれました。彼らは神ゆえに私について来てくれた人々であり、またあらゆる仕方で彼らを元気づけてくれたあなたがたの奉仕ゆえに、彼らは主に感謝をささげています。

 

こういったことは何一つ無為になりません。わが霊および〔捕縛の〕鎖があなたがたへの捧げ物となりますように。あなたがたは鎖につながれている私を軽んじたこともなく恥じたこともありませんでした。私たちの全き希望であるイエス・キリストもまたあなたがたを恥じることがないでしょう。

 

第10章原文

X
1 Φίλωνα καὶ Ῥέον Ἀγαθόπουν, οἳ ἐπηκολούθησάν μοι εἰς λόγον θεοῦ, καλῶς ἐποιήσατε ὑποδεξάμενοι ὡς διακόνους θεοῦ· οἳ καὶ εὐχαριστοῦσιν τῷ· κυρίῳ ὑπὲρ ὑμῶν, ὅτι αὐτοὺς ἀνεπαύσατε κατὰ πάντα τρόπον. οὐδὲν ὑμῖν οὐ μὴ ἀπολεῖται.

2 ἀντίψυχον ὑμῶν τὸ πνεῦμά μου καὶ τὰ δεσμά μου, ἃ οὐχ ὑπερηφανήσατε οὐδὲ ἐπῃσχύνθητε. οὐδὲ ὑμᾶς ἐπαισχυνθήσεται ἡ τελεία ἐλπίς, Ἰησοῦς Χριστός.

 

第11章 アンティオケに使者を遣わしてほしい

 

あなたがたの祈りは、シリアのアンティオケにある教会に届いています。尊い*3鎖につながれ、かの地から引かれてきた者としてみなさんに挨拶を送ります。私は教会の一員に値しない者です。なぜなら彼らの中にあって私は最も小さい者だからです。

 

にもかかわらず、神の御意図により、私は〔このほまれ〕にふさわしいものとされました。しかしそれは自分に何かそれを受けるにふさわしい価値があるからではなく、ひとえに神の恵みによるものです。どうかその恵みが全き形で与えられ、あなたがたの祈りを通し、私が神に到達することができるよう願っています。

 

それゆえに、地においても天においてもあなたがたの働きが全きものとなるべく、神の栄誉ゆえに、あなたがたの教会が、信用に値する神の使者を選出し、その人をシリア〔の教会〕に送り出すことがよろしいかと思います。そうすることで彼はシリアの教会の人々が今また平和の内にあり、教会が妥当な規模に回復され、再び公同的体として再建されつつあることを彼らと共に喜ぶことができるでしょう。

 

それゆえ、書簡を携え、あなたがたの教会の内の一人を向こうに送り出すことがふさわしいことであるように思われます。そうすれば、彼は、神が彼らに与えている平安ゆえに、そしてあなたがたの祈りを通し、彼らが波止場に無事に到着することができたことゆえに、彼らと共に神に栄光を捧げることができるでしょう。全き者とされた人として、あなたがたもまた全きものを想い目指すべきです。あなたがたに善を為す意思があるなら、神もまたあなたがたを大いに助けてくださるでしょう。

 

第11章原文

XI
1 Ἡ προσευχὴ ὑμῶν ἀπῆλθεν ἐπὶ τὴν ἐκκλησίαν τὴν ἐν Ἀντιοχείᾳ τῆς Συρίας, ὅθεν δεδεμένος θεοπρεπεστάτοις δεσμοῖς πάντας ἀσπάζομαι, οὐκ ὢν ἄξιος ἐκεῖθεν εἶναι, ἔσχατος αὐτῶν ὤν· κατὰ θέλημα δὲ κατηξιώθην, οὐκ ἐκ συνειδότος ἀλλ ̓ ἐκ χάριτος θεοῦ· ἣν εὔχομαι τελείαν μοι δοθῆναι, ἵνα ἐν τῇ προσευχῇ ὑμῶν θεοῦ ἐπιτύχω.

2 ἵνα οὖν ὑμῶν τέλειον γένηται τὸ ἔργον καὶ ἐπὶ γῆς καὶ ἐν οὐρανῷ·, πρέπει εἰς τιμὴν θεοῦ χειροτονῆσαι τὴν ἐκκλησίαν ὑμῶν θεοπρεσβεύτην, εἰς τὸ γενόμενον ἐν Συρίᾳ συγχαρῆναι αὐτοῖς, ὅτι εἰρηνεύουσιν καὶ ἀπέλαβον τὸ ἴδιον μέγεθος καὶ ἀπεκατεστάθη· αὐτοῖς τὸ ἴδιον σωματεῖον.

3 ἐφάνη· μοι οὖν θεοῦ ἄξιον πρᾶγμα, πέμψαι τινὰ τῶν ὑμετέρων μετ ̓ ἐπιστολῆς, ἵνα συνδοξάσῃ τὴν κατὰ θεὸν αὐτοῖς γενομένην εὐδίαν, καὶ ὅτι λιμένος ἤδη· ἐτύγχανον τῇ προσευχῇ ὑμῶν. τέλειοι ὄντες τέλεια καὶ φρονεῖτε. θέλουσιν γὰρ ὑμῖν εὖ πράσσειν θεὸς ἕτοιμος εἰς τὸ παρέχειν.

 

第12章 あいさつ

 

ここトロアスにいる兄弟たちがあなたがたに愛を込めた挨拶を送っています。この手紙は、バラスの手により、そこからあなたがたの元に届けられます。あなたがた及びエペソの兄弟たちは共同でこのバラスを私の同伴者として遣わしてくれました。彼はあらゆることにおいて私を元気づけてくれています。私の願いは、あなたがた皆が、彼のことを神の奉仕者の模範として見習うことです。恵みは全てにおいて彼に報いてくださるでしょう。

 

崇貴なるあなたがたの司教/主教*4、非常に尊い長老*5、そしてわがしもべ仲間であるあなたがたの助祭/輔祭/執事たち*6に挨拶を送ります。イエス・キリストの御名、主の御体と血潮、霊肉的両方における主の受難と復活により、そして神とあなたがたの合一において、あなたがた一人一人にそしてすべての方々に挨拶を送ります。恵み、憐れみ、平安、忍耐がとこしえにあなたがたと共にありますように。

 

第12章原文

XII
1 Ἀσπάζεται ὑμᾶς ἡ ἀγάπη· τῶν ἀδελφῶν τῶν ἐν Τρωάδι, ὅθεν καὶ γράφω ὑμῖν διὰ Βούρρου, ὃν ἀπεστείλατε μετ ̓ ἐμοῦ ἅμα Ἐφεσίοις, τοῖς ἀδελφοῖς ὑμῶν, ὃς κατὰ πάντα με ἀνέπαυσεν. καὶ ὄφελον πάντες αὐτὸν ἐμιμοῦντο, ὄντα ἐξεμπλάριον θεοῦ διακονίας. ἀμείψεται αὐτὸν ἡ χάρις κατὰ πάντα.

2 ἀσπάζομαι τὸν ἀξιόθεον*7 ἐπίσκοπον καὶ θεοπρεπὲς*8πρεσβυτέριον καὶ τοὺς συνδούλους μου διακόνους καὶ τοὺς κατ ̓ ἄνδρα καὶ κοινῇ πάντας ἐν ὀνόματι Ἰησοῦ Χριστοῦ καὶ τῇ σαρκὶ αὐτοῦ καὶ τῷ· αἵματι, πάθει τε καὶ ἀναστάσει σαρκικῇ τε καὶ πνευματικῇ, ἐν ἑνότητι θεοῦ καὶ ὑμῶν. χάρις ὑμῖν, ἔλεος, εἰρήνη·, ὑπομονὴ διὰ παντός.

 

第13章 むすび

 

(彼らの妻や子どもたちを含めた)わが兄弟たちの家族および、やもめと呼ばれている乙女たち*9に挨拶を送ります。

 

聖霊の御力によって、強くあってください。私と共にいるフィロンがあなたがたによろしくと言っています。タヴィアの家の人たちによろしく。彼女が肉体的にも霊的にも信仰と愛の内に堅く立てられることを祈っています。私の愛してやまないアルケー*10によろしく。そしてかけがえのないダフノス、エフテクノス、そしてその他すべての人々によろしく。

 

神の恵みの中にあって、みなさん、さようなら。

 

第13章原文 

XIII
1 Ἀσπάζομαι τοὺς οἴκους τῶν ἀδελφῶν μου σὺν γυναιξὶ καὶ τέκνοις καὶ τὰς παρθένους τὰς λεγομένας χήρας. ἔρρωσθέ μοι ἐν δυνάμει πατρός. ἀσπάζεται ὑμᾶς Φίλων σὺν ἐμοὶ ὤν.

2 ἀσπάζομαι τὸν οἶκον Ταουΐας, ἣν εὔχομαι ἑδρᾶσθαι πίστει καὶ ἀγάπῃ σαρκικῇ τε καὶ πνευματικῇ. ἀσπάζομαι Ἄλκην, τὸ ποθητόν μοι ὄνομα, καὶ Δάφνον τὸν ἀσύγκριτον καὶ Εὔτεκνον καὶ πάντας κατ ̓ ὄνομα. ἔρρωσθε ἐν χάριτι θεοῦ.

*1:文字通りには、 “to know”; εἰδέναι

*2:Or, “deacons”; διακόνους. 参:シャフ注釈

*3:θεοπρεπεστάτοις. “most becoming of God.” シャフ注釈

*4:ἐπισκόπῳ; bishop

*5:πρεσβυτερίῳ; presbytery

*6:διακόνους; deacons

*7:文字通りには“worthy of God.”シャフ注釈

*8:“most becoming of God.”シャフ注釈

*9:フィリップ・シャフ注釈によると、「女執事たちがおそらくやもめたちと呼ばれていたのではないかと思われる("The deaconesses seem to have been called widows.")とあり、アンドリュー・ラウスは「ここでの『やもめ』というのは、彼女たちの純潔と献身ゆえにイグナティオスが『乙女』とみなしているところの、実際の寡婦であるかもしれないし、あるいは、慈善目的によりやもめの登録に包含されていた未婚の女性たちを指していたのかもしれません。」と推測しています。参:The Apostolic Fathers Early Christian Writings, Penguin Classics, 1968, [Reprinted with new editorial material by Andrew Louth, 1987], p.105.

*10:アンドリュー・ラウス注釈:「アルケー(Alce)のことは、『ポリュカルポスへの手紙』の中でも同じように愛情込めた表現で言及されています。また、同一人物である可能性がありますが、それから何年も後に執筆された『ポリュカルポスの殉教』の中で、‟アルケー”なる人物が殉教者の逮捕に関わったスミルナの行政官であったヘロデの親戚として記述されています。//訳者注:その部分の引用"For this end he suggested it to Nicetes, the father of Herod and brother of Alce, to go and entreat the governor not to give up his body to be buried, "lest," said he, "forsaking Him that was crucified, they begin to worship this one." The Martyrdom of Polycarp, chap 17.