巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

「聖書的」であることの意味について

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「何かが『聖書的である』という時、それは一体どういう意味なのでしょう。私たちは『聖書的』という言葉を、記述的な意味(つまり、「聖書に見いだされるもの」)というよりも、「何を神様が望んでおられるか」という規範的な意味で使うことに慣れっこになっています。しかし、聖書的なライフスタイルや考え方を主張するあらゆる言明の背後には、聖書解釈や適用に関する一連の複雑な諸前提が存在しているのです。」

レイチェル・ヘルド・エヴァンズ*1

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ユダヤ・キリスト教的な時間観について――時の螺旋(らせん)構造と歴史認識

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 時というものには、創造から終末に向かう「線分」という側面と、「円環」という側面があり、したがって聖書的な時間観というのは螺旋(らせん)的である、というとても興味深い記事を読みました。それをみなさんにも共有したいと思います。

 

以下、苫小牧福音教会 水草牧師のメモ帳より一部抜粋(ココ

 

聖書の時間論と歴史

 

 一般に古代インド、古代ギリシャ的な時間観は円環であるといわれる。それは自然宗教的な世界に共通した時の見かたである。春夏秋冬の自然の営みから敷衍して、時というものは同じことの繰り返しなのだという考え方がその根っこにあると思われる。

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イマージング運動――昔風のリベラリズム(by ボブ・デウェイ)【後篇】

前篇〕からの続きです。

 

目次

  • オーソ・パラドクシー:逆説と矛盾の受容
  • 結語
  • Ideas Have Consequences: A Partial Paraphrase and Review of Modern Fascism by Gene Edward Veith 
    • Back to Nature
    • Martin Heidegger the Fascist
    • The Rejection of the Value of the Individual
    • The End of Transcendence
    • Anti-Semitism
    • The Real Problem
    • Conclusion
    • End Notes

 

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本書中、もっとも神学的リベラリズムが顕著な例として挙げられるのが、サミール・セルマノヴィック(Samir Selmanovic)執筆による論文「包含性という甘美な問題――他者の中にわれわれの神を見い出す("The Sweet Problem of Inclusiveness – Finding our God in the Other")」だった。(Doug Pagitt and Tony Jones edit.,An Emergent Manifesto of Hope, Grand Rapids:Baker, 2007, pp190-199)

 

彼のこの「包含的」見解は、ローマ・カトリック教会の神学者カール・ラフナー(Karl Rahner)によって普及するようになった説であり、「匿名のキリスト教」と呼ばれ、セルマノヴィックが脚注をつけている。

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イマージング運動――昔風のリベラリズム(by ボブ・デウェイ)【前篇】

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Doug Pagitt and Tony Jones, Emergent Manifesto of Hope, An (emersion: Emergent Village resources for communities of faith)

 

Bob DeWaay, Emergent Old Fashioned Liberalism

 

最近、出版されたドーグ・パジット/トニー・ジョーンズ共編『希望のイマージング・マニフェスト(An Emergent Manifesto of Hope)』の中には、イマージング「会話」運動のさまざまな指導者たちによる25篇の論文が掲載されている。

 

この運動を神学的に特定することは難しいものの、この本はイマージング・チャーチ・ムーブメントの鍵となる統一的な神学的観点が何かをかなり明確に示している。そう、それは神学的リベラリズムである。

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神はわれわれの人知を超えた仕方で動かれる。(ウィリアム・クーパーの信仰詩)

 

神はわれわれの人知を超えた仕方で動かれ、

ご自身のみわざを成し遂げられる。

主はご自身の足跡を海の中に植え、

嵐の上を進まれる。

 

計り知れない鉱床の深淵にて、

けっして誤ることなき巧腕にて、

主はご自身の輝かしいご企図を護持され、

至上の聖意(sovereign will)を為される。

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それでも歌鳥はうたう。(エミー・カーマイケルの信仰詩)

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主よ、汝のしもべは、家になにも持っていません。

共用のオイル一杯でさえも。

 

なぜなら、冷酷で強硬な〈あの人〉が、

――人が「苦痛」と呼ぶ、武装した〈あの人〉が、

繰り返し、繰り返し、私のまずしい家を襲い、

荒らし回るからです。

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教会の性質と目的――「教会」と「イスラエル」について(by ウェイン・グルーデム、ジョージ・ラッド他)

 目次

  • ウェイン・グルーデム著「教会とイスラエル(The Church and Israel)」『組織神学』第44章
  • 【追加資料】【歴史的プレミレ】ジョージ・ラッド著『終末論』(第2章 イスラエルについてはどうか。)より
  • 【追加資料2】【歴史的プレミレ】ディスペンセーション主義キリスト教シオニズムについて(安黒務師)
    • B-2) ミクロの背景―「ディスペンセーション主義イスラエル論」のベクトル
    • B-3) 使徒的イスラエル論とは何か
    • A-2) キリスト教シオニズムの諸形態
  • 【追加資料3】【歴史的プレミレ】『福音主義イスラエル論: 神学的・社会学的一考察』(安黒 務 著)より一部抜粋
    • 使徒的実践への「不適合」と「適合」の要素  
      • B-1) 使徒的実践に「適合しない要素」とは何か? 
      • B-2 ) 使徒的実践に「適合する要素」とは何か
  • 【追加資料4】Christian Zionism: Road-map to Armageddon? (キリスト教シオニズム:ハルマゲドンへのロードマップ? by ステファン・サイザー)【英文】
    • 【補足1】【歴史的プレミレ】「ダニエル9章24-27節の釈義」(by ジョージ・ラッド)【日本語】
    • 【補足2】【アミレ】Daniel’s Prophecy of the Seventy Weeks(ダニエル9章24-27節の70週の釈義) by K. Riddlebarger【英文】
    • 【補足3】【アミレ】Daniel's 70 Weeks(ダニエルの70週 by Sam Storms)【英文】
    • 【補足4】【アミレ】ダニエル書「第70週の契約」(by メレディス・G・クライン)【日本語】
  • 関連記事 ステファン・サイザー氏(契約主義)とカルヴィン・スミス氏(キリスト教シオニズム)との間で行なわれた公開ディベート
  • 【追加資料5】【アミレ】「ガラテヤ6:16の『神のイスラエル』は『信者であるユダヤ人』を指す」というジョン・ワルブード師のディスペンセーション式聖書解釈に対するA・ホエケマ師の反証【英文】
  • 【追加資料6】【アミレ】D・A・カーソン「教会はいつ始まったのか?)」【日本語】
  • 【追加資料7】【歴史的プレミレ】岡山英雄師 「患難期と教会(黙示録の終末論)」『福音主義神学』31 号(日本福音主義神学会、2001 年、日本語)
  • 【追加資料8】千年王国とイスラエル(日本語)
  • 【追加資料9】【アミレ】The Church, Israel, and "Replacement" Theology (教会、イスラエル、そして『置換』神学 by Sam Storms)【英文】
  • 【追加資料10】【歴史的プレミレ】Dispensational vs. Historic Premillennialism(「ディスペンセーション主義前千年王国説と歴史的前千年王国説の9つの違い」by Wick Broomall)【英文】 
  • 【追加資料11】神の国をめぐっての還元主義を避けるために――「すでに始まっている終末論(inaugurated eschatology)」と「未来主義の終末論(futurist eschatology)」との間に存在する緊張関係について(by D・A・カーソン、日本語)
  • 【追加資料12】私のディスペンセーション主義にいかにして変化が生じていったのかーーデイビット・L・ホワイト師の証し

 

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Wayne Grudem, Systematic Theology, Chapter 44. The Church: Its Nature, Its Marks, and Its Purposes, p. 859-863 抄訳(小見出しはブログ管理人によるものです。)

 

ウェイン・グルーデム著「教会とイスラエル(The Church and Israel)」『組織神学』第44章

 

イスラエルと教会の関係について、福音主義プロテスタントの間には異なった諸見解が存在します。そしてこの問題は、ディスペンセーション主義的な神学システムを支持する人々によって表面化されてきました。

 

ディスペンセーション主義者によって書かれたもっとも克明な組織神学であるルイス・スペリー・シェイファー(Lewis Sperry Chafer, 1871- 1952)の『組織神学*14』は、イスラエルと教会の間に多くの相違点があると指摘し、そして、旧約聖書の中における神を信じるイスラエルと、新約聖書の教会との間にさえも多くの相違点があると指摘しています(Chafer, Systematic Theology, 4:45-53)。

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