巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

なぜホームスクーリングの親や教育関係者たちがヘブル的ルーツ運動(HRM)に巻き込まれているのか?ーーHRMの説伏プロセスを解析する。

教育と子ども(出典

 

目次

 

Hebrew Roots Movement – Salesmanship 101 | Joyfully Growing in Grace(抄訳)

 

訳者はしがき

 

本記事の執筆者は、キリスト者としてホームスクーリングを実践しておられる方です。また、私(訳者)も、クリスチャン・ホームスクーリングを支持しており、そこに関わっているご父兄や教育関係者の方々に深い敬意を払っています。どうかこの翻訳記事が、そういった方々にとって益とされますように。

 

ホームスクーリングーーヘブル的ルーツ運動の恰好のターゲット?!

 

ヘブル的ルーツ運動の誤りに影響されやすい今一つのグループは、クリスチャンのホームスクーリング・コミュニティーです。

 

私の家族を含めたホームスクーリングの人々は概して、「独立型」である傾向が強いと思います。また私たちは一般に、既存体制に対し疑問を抱き、基本的に伝統的理想を保持しつつも、新しい概念や思想に対し比較的オープンであり、また対抗文化的傾向を持っているように思います。

 

そして私たちは物事を「ユニークな」やり方でやっていくことに対し尻込みしません。従来のやり方に行き詰りを感じた場合、私たちは「よし、それなら違うやり方を試してみようではないか!」と積極的な精神を持っています。こういった性質それ自体は良いものであり、ホームスクーリングをする私たちに柔軟性を提供するものであると思います。

 

しかしながら、こういった性質は、私たちが自分たちの教会環境に不満を持っていたり、傷ついていたり、あるいは反抗的な思いにとらわれていたり、「共に礼拝することのできる‟同じ思い”を持つ信仰者たちの集まる交わりを一つも見つけることができない」と感じていたりする際、両刃の剣ともなり得るでしょう。

 

ホームチャーチや家庭集会は多種多様ですので、私はそれらを十把ひとからげにしたくはありません。しかしながらその中のいくつかは、ヘブル的ルーツ運動/メシアニック諸運動が自らの思想促進拠点を見い出す、恰好のターゲットになっているというのは、残念ながら事実のようです。

 

ほんのわずかのパン種が、粉のかたまり全体をふくらませる

  

最近、ヘブル的ルーツ運動から脱出した方とお話する機会がありましたが、その方は伝統的な諸教会と家庭集会に関し、次のような適切なコメントをしておられました。

 

「最近ますます、有名な牧師の方々がHRMの教えを受容し、促進する傾向が強まっているように見受けます。こういった牧師の方々は、聖書解釈や学術性、霊的識別力などでかねてから定評があり、キリストのみからだの中で広く尊敬されている人々です。それゆえに、彼らの影響下、今や教会全体がHRMの影響下に取り込まれる可能性が強くなってきたのではないかと思います。

 

 HRMに関わった経験から自分が学んだことは、パリサイ人のパン種(ルカ12:1)というのは今日も根強く生きており、これらの教えは是非とも回避されなければならないということです。なぜなら、ほんのわずかのパン種が、粉のかたまり全体をふくらませるからです。」

 

ホームスクーリング支援団体「ハート・オブ・ウィズダム」の教えについて

 

上記の事に加え、ホームスクーリングをしている家庭の親たちは、良い教育カリキュラムを探求する過程で、(インターネット上のフォーラム、サポート・グループ、カリキュラム教材の供給者とのコンタクトを通し)トラー遵守の家庭に接触する可能性が大きいのです。

 

そういった教材供給元の一つがハート・オブ・ウィズダム(Heart of Wisdom)であり、このミニストリーでは、子供の教育における「ヘブライ的アプローチ」を強調し、それを「ギリシャ的アプローチ」と対立させています。

 


偽りの霊的教えをしているその他の諸団体と同様、ハート・オブ・ウィズダムの中にも良い資料があり、そういった善の中に、「小さなパン種」が混在していますので、私たちはよくよく注意しなければなりません。

 

ハート・オブ・ウィズダムの「ヘブライ的思考」推進は一見したところいたって僅かなもののように見えます。しかしこのサイトおよび一連の姉妹サイトやフォーラムを詳しく調べていくと、この団体が「信仰のヘブル的ルーツ」を徹底して押し進めていることがはっきり分かってきます。

 

そしてこの団体の提供しているカリキュラム教材の一つであり、現在、ホームスクーリング界で非常に人気を博している本の一つが、「聖書の祝日へのファミリーガイド(“The Family Guide to Biblical Holidays”)」です。

 

 

この本に関し、アマゾン・レビューに次のような書評が載っています。

  

「私は本書の内容にひどくがっかりしました。著者は、聖書的祭りに関し人々を教育する目的で本書を執筆したと書いておられますが、その中には、カバラに根付いた情報に関する多大な情報も含まれており、しかも著者はそのことを言及していません。子どもに聖書の真理を教えるべく私は本書を購入したのですが、祭りの慣習のルーツについての著者の調査のずさんさに驚きました、、」

 

上記のレビューアーが言っていますが、ヘブル的ルーツ運動/メシアニック・ユダヤ主義の中には、カバラおよびゲマトリア関連の使用に関する一貫した含意が底辺に流れています。*1

 

久保有政著『ゲマトリア数秘術―聖書に隠された数の暗号』(ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)

 

ある母親が私に語ってくれましたが、彼女の家族が属しているホームスクーリング支援グループは、彼女の家族を除く、全員がトラー遵守の人々だということです。そしてトラー遵守の教えを信奉するこれらの家族全てが共通して所持しているのが、先述の『聖書的祝日のファミリーガイド』だったそうです。

 

興味深いことに、これらの人々は元々、聖書の祝祭について学ぶべく教材カリキュラムの一環としてこの本を買ったのですが、本を読み終わった暁には、祝りを遵守するだけでなく、完全にトラー遵守者になるよう「命じられている」ように感じるようになっていたのです。しかし、律法や各種の祭りを守るよう私たちに命じている、そのような掟は存在しません。

  

ニーズを確立


確かに今日、現代教会の中でリアルな問題に直面し、満たされない思いでいるクリスチャンが多くいます。そしてヘブル的ルーツ運動は、人々のそういった慢性的不満をうまく利用しつつ、一見、真正そうに見えるなにかを確立しようとしています。

 

実際、HRM関係者は、まず、彼・彼女の不満(もしくは、彼らの未成熟さ、既存教会で受けた傷、反逆心など)の正当性を保証してあげます。

 

そうした上で、「あなたが既存のキリスト教の中で不幸せなのは、~~という理由があるからなんです。」と訳を説明してあげます。そして彼らに言うのです。「だからこそ今、あなたは信仰のヘブル的ルーツに戻るよう導かれているんですよ」と。

 

ヘレニズム的思考vsヘブライ的思考

 

HRMは、聖書的キリスト教の正統信条を「ヘレニズム化されたもの “Hellenized”」だとラベル貼りしながら、一つ一つ解体してゆきます。そうした上で、次には、思考、言語、慣習のいわゆる「ヘブル的な」体系に基づいた、聖書に関する全く新しい視点をこれまた組織的に再構築していきます。*2

 

「ヘレニズム的思考 VS ヘブライ的思考」というHRMの教えがもたらす結果は、福音の最小化、トラー及びイスラエルの‟一部になる”ことへの不適切な高揚です。すべての民族、国々のための福音のシンプル性が色あせ、「ヘブライ的思考」によって要求される律法や諸伝統の比重の下に福音は次第に消滅していきます。

 

HRMの教会観

 

また、ヘブル的ルーツ運動は、「これまで2000年余り、キリスト教会はずっと異教主義に根付かされていた」という教会観を人々の脳裏に焼き付けることにより、自らの教義体系のさらなる必要性を人々にアピールします。

 

実に、キリスト教会のどの相も免除対象外ではありませんーー。カトリシズム、プロテスタンティズム、福音主義、根本主義等ーーこれら全ては、歴史を通じこれまでずっと、なんらかの形で異教主義に影響を受け、最悪のケースとしては異教主義そのものを実践していたのだとHRMは糾弾しています。

 

ただ恵みによってーー「ヘブル的ルーツ運動」:ある脱会者の心の軌跡」という証しの以下の部分を初めて読んだ時、私は涙を抑えることができませんでした。

 

 「イェソッド講座を受けた初日、私の心は散り散りになりました。その時私は『ああ、自分はこれまでずっとこの真理を知らずにきたのだ』という思いで圧倒されました。帰りの車の中でも涙が止まらず、これまでの生涯、自分は、既存教会/バビロンで、『偽り』を吹き込まれ、教え込まれていたという事を知り、それを泣きながら悔い改めました。自分がずっとずっと探し求めていた『真理』ーーこれをついに見い出したのです。どんなに歓喜したことでしょう。 

 

 しかしそれは非常に私を誤らせるものでした。というのも、それを機に私は、体系的に自分に対抗してくる新しいライフ・スタイルおよび神学にどっぷり浸かっていくことになったからです。やがてそれは自分の中で耐えがたいほどの重荷になっていきました。私は『別の福音』を吸収しつつあり、その異なる福音は重圧となって私にのしかかり、肉体的にもその重さを感じることができるほどでした。その当時は理解できなかったのですが、何かいつも倦怠感と抑圧感がまとわりついて離れない感じがしていました。」

 

またHRM界隈のパラノイアを滋養すべく数多くの著書が出回っています。例を挙げますと、ルー・ホワイトの『化石化された慣習(“Fossilized Customs”)』、C・J・コスターの『わが民よ、そこから出てきなさい(“Come Out of Her My People”)』、リチャード・ライヴスの『太陽にさらされ過ぎて(“Too Long in the Sun”)』、それからなんといってもアレクサンダー・ヒスロップによる『二つのバビロン(“The Two Babylons”)』です。

 

特に最後の『二つのバビロン』は、その他の著作のいわば《族長的存在》であり、ここから「キリスト教会の異教主義」に関する現代のさまざまな類書が派生しています。

 

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たしかに彼らによって出されている批判の中にはいくらかの真理が含まれていますが、これらの著書の中に見い出される「異教主義」批評は、はるかに度を過ぎています。

 

彼らは異教的慣習やヘレニズム文化の影響を過度に誇張させ、且つ、調査における貧弱な学術性により、(多くの場合裏付けの取れていない)歴史的出来事と、教会内での諸慣習を結び付けてしまっています。尚、ラルフ・ウッドロー氏が、『バビロンとの関連性?(The Babylon Connection?)』という著書の中で、上記のHRM著述によって出されている諸主張を検証しています。

 

ニーズの満たし


一度、ある人が「そうか、これまでキリスト教というのはずっと誤りの中にあったんだ。HRMの方々の言うように、既存キリスト教というのは誤った宗教なのだ。」ということを確信させられるや、偽教師たちは、「秘密の知識」や「隠された知恵」などの‟特別な教え”をもってあなたを急襲してきます。(但し、この手の戦法は、何もヘブル的ルーツ運動に限ったものではなく、あらゆる偽りの信仰体系に共通するものです。)

 

こうしてヘブル的ルーツ/メシアニック運動は、キリストの内にあって私たちはすでにその下には置かれていない「契約」ーーこれを遵守しようとする人間の努力をもってそのニーズを満たそうとしてきます。そしてその際、既存キリスト教の中にあって自分はずっと「間違っていたんだ」ということを確信させられたクリスチャンが恰好のターゲットになります。

 

彼らは自分のその間違いの「埋め合わせ」をしなくてはならない必要性を感じているからです。そしてこれが、行ないを基盤にした信仰体系へと人を誘導するパーフェクトな設定です。

 

そうです。ひとたびあなたがトラーを遵守し始めるなら、すべてはつじつまが合うものとなっていくでしょう。特別な洞察、隠された秘密、魅力ある文化、そして「ヘブライ的思考」という文脈による既存教義の組織的置き換えなど。。。

 

こういった説得作戦において、HRMは以下に挙げる方法を一貫して用いています。

 

解体作業

 

彼らはまず組織的に文化的教会を解体していきます。そこにはいくつかの妥当な根拠も挙げられていますが、彼らは器用に、不当なる理由づけと妥当な批判を混ぜ合わせつつ、「1世紀を除く、その他全ての教会史において、キリスト教会全体は誤りの中にあった」という思想をあなたの脳裏に植え付けようとします。

 

それだけでなく、彼らは、キリストの内にある初期信仰者たちの持っていた ‟真の” 宗教は、トラー遵守という慣習を永続的に持っていたのであり、それは ‟キリスト教” などでは全然なかった、ということをあなたに確信させようと働きかけてきます。この説伏を成し遂げる上で、彼らは通常、以下に挙げる3点の1つか、もしくは全部を実行しています。

 

説伏方法1

 

彼らは次のように説いてくるでしょう。「あなたがこれまで教えられてきた既存キリスト教の信仰体系は、1世紀以降  ‟ヘレニズム化”  され、オリジナルの教えそして、‟真の1世紀の信仰” から逸脱しています。また、あなたは、神の律法に対する不従順は言うまでもなく、異教的太陽神礼拝や偶像礼拝に勤しんでいます。」*3

 

説伏方法2

 

彼らは新契約を再定義しようとしてきます。そして新約聖書の中にはっきりと明示されている「新」契約を、‟更新された”契約という風に置き換えようとしてくるでしょう。*4 

 

説伏方法3

 

彼らは、「‟新契約” というものは存在するけれども、私たちは未だその新契約の下にはいない。だから、今はまだ旧契約の律法を ‟遵守する” 必要がある」とあなたに説いてきます。彼らはこの立場を主張するに当たって、聖書の預言やイエスの言葉を誤用します。(文脈を無視し、もしくはテキストの原語を誤用。)

 

悔い改めに関する聖書概念の歪曲

 

彼らは「悔い改め」に関する聖書の概念を歪曲しています。キリストにあって贖われた信者は、悔い改める際、自らの罪およびイエスがどのような御方であるのかを認め、神の恵みおよび、キリスト・イエスが十字架上で成し遂げた完成された御業に目を向けます。

 

他方、HRMの中にいる人にとっては、悔い改めというのは自らの罪に背を向け、神の律法に向かい、自分が失敗した時のための「セーフティーネット」としてイエスと共に律法遵守に立ち帰ることを意味しています。

 

しかしながら、聖書の中における悔い改めの定義は、自分の罪を認め、キリストにある神の備えを認めつつ、心と思いを転換させることにあります。こうして聖霊が私たちの内で更新の働きをしてくださり、私たちの行ないが変えられていきます。*5

 

HRMはいかにして各種反論に答えているのか

 

私が出会うHRM/メシアニック・ユダヤ教/その関連セクト・グループの脱会者の方々は決して知力に欠けた人々ではありません。原則として、こういった人々の第一の目標は、人間の伝統から解放され、神に喜ばれる形で神を礼拝することにあると思います。*6

 

HRMの指導者や信徒たちは、質問や挑戦を受けた際、言語学、教会史、中枢的教理の再構築について述べつつ、「特別な知識」や「隠された洞察」を披露します。以下は、彼らが質問/反論に答える際、自分たちの優位性を確立すべく用いているメソッドおよび用語解説です。

 

ヘブライ語イズム(Hebrew-ism)

 

ヘブライ語イズム(Hebrew-isms):神学的思想を伝達する際、ヘブル的ルーツ運動の人々が用いるやり方。例:YHWH/イェシュアという神称のみを排他的に用いる。英語のHoly Spirit(や日本語の聖霊ではなく)あえて、ヘブライ語のルアッハ・ハ・コデッシュという語を用いる等。

 

また指導者たちは、独自の「翻訳」から聖書箇所に言及しつつ、英語ではなくヘブライ語の単語をちりばめようとします。*7従って、例えば、「マタイ」の福音書は、「マティットヤフ」の福音書となり、「ヨハネ」は「ヨハナン」となります。「ブリット・ハダシャー」というのは大きな名称ですが、これは「新契約」ではない「更新契約*8」を意味します。

 

ここで言う「更新契約」というのは、律法に立ち戻る、旧契約を更新するという意味があり、新契約がもたらすいのちの新しさに入るという意味ではありません。

 

また、各種祭りに関する詳細の専門語ボキャブラリーそれ自体は悪いものではなく、聖書の中の祭りは、キリストにある本体を指し示す力強い像をあらわしています。

 

しかしながら、上記のような巧みな語使用は、HRMの指導者たちが「教え子たち」の上に立つ際、そして、HRMの信徒たちが、求道者たちをヘブル的ルーツの「思考」に導き入れる際に求道者の上に立つ際の、優越性プラットフォームになっています。この優越性プラットフォームは以下に挙げる方法で伝達されます。

 

優越性プラットフォームのからくり

 

それは、解説する人々の側に、より優越した知識や知恵があるような雰囲気を醸し出させ、それにより、説明を聞いている側は、話し手の言葉に過分/そして未検証の尊敬、重きを置くよう方向づけられていきます。

 

それは事の本質から注意をそらす戦略ともなり得ます。立て続けに聞くなじみのない言語のシャワーの中で偽教理が伝達されていっているため、聞き手は偽教理を探知しにくくなっています。

 

こうしてヘブライ語イズムの優越性プラットフォームが出来上がります。そうです。この教えを説いている人には特別な明察、秘密の知識、もしくは隠された啓示があり、これまで、フツーのクリスチャンであったあなたは、既存教会の中でこんな教えを聞くことなどできなかったのです!

 

それだけではありません。この「真理」は、これまでずっと既存教会の中で意図的に隠されてきました。歴代にわたり、教会は腐敗し続けてきました。ですから、「真理」があなたを照らすべく、あなたには今どうしても新しい教師たちが必要であり、彼らに依拠しなければならないのです。

 

こうしてあなたの心の中に植えられた「ヘブライ語イズム」の上に、彼らは独自の偽教理を構築していきます。通常、彼らに質問してもまっすぐな答えは返ってきません。質問は逆質問という応答のされ方をします。

 

彼らは自らの信仰内容を擁護する態勢にない際にも、あなたが信じている信仰内容を解体する術には長けている場合が多く、解体した後、彼らはそこを自分たちの偽教理で置き換えていきます。ですからあなたが再度、彼らに質問しようとしても、あなたが振り返ることのできるのは唯一、解体され粉々になった瓦礫の山だけ、という状況が発生します。

 

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出典

 

そうすると、あなたは辺り一面に広がる教理的瓦礫を見ることに忙しくなり、「結局、自分はこれまで既存キリスト教会の中でずっと騙されていたのではないだろうか?」という可能性に圧倒されます。そしてへとへとに疲れ果てた挙句、新教師たちの持つこれらの「特別な知識」や「隠された洞察」などの本当の出処がどこなのかを調査するエネルギーがもうどこにも残っていないという状態になります。

 

こういったテクニックに取り入れられた信仰者たちは、気づかないうちに殴り倒され、敵のウソによって「救出」されるしかないという状況に追い込まれていきます。

 

教理の「販売」完了

 

ある脱会者の方がご自分の体験を次のように語っていました。「‟散乱した空間”の住民になるや、人は、『律法を守らないと救いを失ってしまう』と確信するようになっていきます。」

 

こうして新教理の「販売」が完了します。「神を愛するなら、あなたは主の掟を守ります」という言明をはるかに超え、ヘブル的ルーツ運動は、恐れを基盤にした信仰体系に還元されていきます。つまり、もしもあなたがその目的を維持できないのなら、あなたは永遠の死の中で滅びるのです。

 

もしもあなたの救いが、律法を遵守するというあなたの行為に依拠していないのなら、律法「遵守」はオプショナルなものになります。しかしHRMの人々と対話を続けてみると分かってくるのは、彼らの信仰体系の中では旧契約の「遵守」はオプショナルなものではないという事です。

 

そしてもしそれがオプショナルなものでないのなら、律法が在るところには、強制および処罰が伴わなければならないということになります。そしてこの結末は、‟販売” の締めとして非常に効果的なものです。

 

ー終わりー

 

関連記事

*1:詳しくは、この記事。それから、脱会者による日本語の証としては、「カバラへ向かう」。

*2:ユダヤ教および初代教会に対するヘレニズムの影響については次の記事をご参照ください。“Hebrew Roots Movement – The Issue of “Hellenization”

*3:詳細は、“Hebrew Roots Movement – The Issue of ‘Hellenization’ “.

*4:HRMによるこの主張に関しての検証は、“Hebrew Roots Movement – New Covenant or ‘Renewed’ Covenant”

*5:詳細は、以下の記事をご参照ください。Hebrew Roots Movement – The Perversion of RepentanceRepentance For Those In Christ: A One Time Thing or an Every-Time-We-Sin Thing?” ‟Hebrew Roots Movement – Hebrews 10, Willful Sin, No More Sacrifice, and Judgement, Oh My!

*6:彼らのこの願望がいかにして歪められていくのかについてのアイロニーの詳細は、“Doublemindedness in the Hebrew Roots Movement – The Use of Kabbalah and Gemetria”をご参照ください。

*7:詳しくは“Hebrew Roots Movement – Messin’ With the Word”を参照。

*8:検証記事はココ