巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

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なぜ正教改宗後13年して再び福音主義に戻る決断をしたのかーー水面下で着実に進行しつつある正教リベラル化に直面して(by E・パーソン、保守聖公会)

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出典

 

目次

 

Embryo Parson, For Evangelicals and Others Considering Eastern Orthodoxy(拙訳)

 

東方正教会に転向していく福音主義クリスチャンたち

 

ダグ神父と同じような結論*1に到達した相当数の福音主義クリスチャンたちは一般に、ローマ・カトリシズムや伝統的アングリカニズムよりもむしろ東方正教の方に改宗していく傾向があります。

 

エヴァンジェリカル界から正教に転向した改宗者たちによって出版されている印刷物をみてください。そこには、こういった元福音主義者たちがいかに「古代キリスト教会」に「帰郷("came home")」したかに関する称賛内容で溢れています。

 

かくいう私もかつてその中の一人でした。私は転向後、約13年、正教会のメンバーとして信仰生活を送りました。ですから内部を見て来た者として私は皆さんに証言することができます。ーーこういった改宗者のほとんどは、東方正教会に関する現実離れしたロマンティズムの虜になっているということを。

 

なぜ私が正教会を離れたかについて詳細に入ることもできますが、本稿では、以下に挙げる4点だけに限ってお分かち合いさせていただきたく思います。(訳注:この記事では最初の1点目の部分を翻訳。)

 

忍び寄るリベラリズム

 

正教会の神学者であり祭司であるグレゴリー・ジェンセン神父が正教会内のリベラル化の動きを率直に認め、次のように述べています。(以下、ルーテル派の方のブログからの引用

 

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Fr. Gregory Jensen, 25年以上に渡り、大学キャンパスでの奉仕に従事。これまでシャスタ大学、シンプソン大学、ピッツバーグ大学、カーネギー・メロン大学で正教徒の学生や教職員に仕え、現在はウィスコンシン・マディソン大学内で仕えている。主著The Cure for Consumerism (2015)。また心理学、神学、経済学に関する学術論文も執筆している。*2

 

「‟米国正教会*3”の学者であり司祭であるグレゴリー・ジェンセン神父によると、(一見したところバラ色の光景のようにみえる表舞台の背後で改宗者たちはこの傾向に必死に反対していますが)、北米の正教会は、現在、プロテスタント主流諸教会と同じく急速なリベラル降下の道を辿っています。

 

 (プロテスタント出身の改宗者たちは元々、自教団内で進行するリベラル化を逃れるべく正教会に避難してきたのです。)それゆえ、グレゴリー・ジェンセン神父は、『米国における正教会はその民族別諸教区全般において、次第に'the Eastern-Rite Mainline'のような外観を帯びつつあると言っています。

 
 それでは、どのようにしてそうなりつつあるのでしょうか?例えば、正教を背景とする政治家たちの公式的な中絶・同性婚支持は不穏なほど広範囲に及んでおり、この立場は、正教会の倫理的教えとは真っ向から対立しています。またこの問題に関し、司祭たちは『キリスト者の倫理的伝統を効果的に教示すること』ができておらず、その結果、信徒たちを、世俗化および文化的バーバリズム(未開主義)の勢力に明け渡してしまっています。

 

 また、グレゴリー神父は言及しておられませんが、正教会の動向を注視している人々は、米国の正教会聖職者たちの間のさまざまな性的、金銭的スキャンダルにより、多くの敬虔な聖職者や信徒たちの士気がくじかれている現状に気づいています。

 

 こうした問題を見据えた上で、グレゴリー神父は、西洋の正教会は、西洋キリスト教伝統の持つ遺産ーー特に、カトリック伝統の『信仰、理性、自然法、および、キリスト教倫理性の持つ客観的・普遍的性格の協調』ーーという知恵に耳を傾けるべきではないか、と提唱しています。

 

 このような事を公に提言することのできるグレゴリー神父は洞察力があり、且つ勇敢な人だと思います。というのも、私がこれまで出会ってきた雄弁な正教徒ーー特に西洋人改宗者たちーーの大半は、西方キリスト教に対し敵意を抱いており、教父アウグスティヌスなどは彼らの恰好の攻撃ターゲットになっています。

 

 彼らの目に、北アフリカのこの教父は、ローマ・カトリシズムを生み出し、また、その反動分子としてのルター、つまり『プロテスタンティズム』を生み出した元凶としての責めを負っています。しかしながら、アウグスティヌス(およびルター)に関する正教側の、もう少し同情心をもった取扱いの姿勢なくしては、東方正教会と西方キリスト教との間の親交関係の回復は、うわべだけのエキュメニカル会合挨拶の域を出ることはないでしょう。

 

 また、リベラル派プロテスタント陣営とは別々の道を歩む決断をしてきた宗教改革の告白主義的諸教会(confessional churches)からも私たちは何かを学ぶことができるのではないかと、敬意を込め私はグレゴリー神父に提言したく思います。

 

 私の見解では、正教会の抱える諸問題の大きな部分は、この教会が実際には『告白主義』的教会ではなく『巨大天幕』としての教会であることに由来しているのではないかと思います。それゆえに、現在、正教で問われているのはそのテントがどれほど大きいかになっており、そのため、この陣営内に、中絶権の認証、女性司祭是認、ホモセクシュアリティーに関する教会教義の修正を推進する、熱心にして著名な支持者たちが存在するようになっているのではないでしょうか?

 最後になりますが、50年以上前に、サッセ博士が表明した予見的洞察が現実のものとなりつつあることを私たちは現在、目撃していると思います。サッセ博士は次のように述べました。『現代世界において、主要なキリスト教共同体のすべては、一つとして例外なく同じ神学的諸問題に直面するようになるだろう。』

 

 倫理的リベラリズムの危機に直面し、西方クリスチャンーー特に伝統的ルーテル派の信者ーーの中には、『自分たちの諸教会の中にかくまで大惨事を引き起こしてきたモダニズムの破壊的強風から逃れるべく、コンスタンティンティノープル〔=正教〕はもしや我々に避難所を提供してくれるのではないだろうか?』と考えるかもしれません。しかし、そういう方々は、ボスフォラス海峡に飛び込む前にもう一度慎重に熟考する必要があると思います。」*4*5

 

エピスコパル化(監督制主義化)現象

 

それゆえに、正教会はゆっくりとですが着実に、リベラル化プロセスを経験しつつあり、私はこの現象を、「エピスコパル化("Episcopalianization" 監督制主義化)」と呼んでいます。但し、この現象は、ローマ教会のエピスコパル化、そして特にこの問題におけるアングリカン公会の背後に喜々として姿を潜めています。

 

そしてこれは、ゆっくりと着実に、リベラル派プロテスタントの‟メインライン”を模倣しつつあります。たしかに正教会は、神学的には依然として非常に保守的ですが、水面下では、リベラル主義者たちの活動に関連した大いなる動揺があり、福音主義からの改宗者たちはそういう〔正教内での〕リベラル化傾向を見逃してはいません。かくいう私も、改宗者としてこの点を見逃しませんでした。*6

 

ー終わりー

 

関連記事のご紹介

①求道しつつも最終的に東方正教会に改宗しなかった改革派牧師の証し。(その後、この方は聖公会に移りました。)

②福音主義教団のリベラル降下に直面し、もはや防ぎ切れないと悟り、正教会に転向した元改革派神学者の福音主義批評。

③対等主義化した長老派の教職を辞し、保守的な長老派教団に移籍するも、「うちの教団もあと25年以内に女性按手が認可されるだろう」という教団長の予見的見解に致命的打撃を受け、「プロテスタンティズムには世俗思想の荒風に対抗する力がない」と東方正教会に転向したヨシヤ・トレンハム神父。下のビデオの中で彼はプロテスタンティズムを論駁しています。尚、トレンハム神父は、改革派神学校時代、R・C・スプロールやジョン・フレーム、J・I・パッカー等に師事していました。

④宗派の違いを超え、グローバルな問題になっているキリスト教会内のジェンダー・フェミニズム問題及びリベラリズムに関する記事

*1:How I Got There: An Evangelical Converts to Anglicanism

*2:グレゴリー・ジェンセン神父はグローバルな視野に立ち、保守的クリスチャンたちが直面している世俗化および公共圏における「寛容という名の非寛容」の問題に取り組んでいます。下の記事の中で、ジェンセン神父は、ウィスコンシン・マディソン大学が、妨害者たちが保守派に禁じることを許可する一方で、反キリスト教hate groupを歓迎している矛盾を取り上げています。

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正教会の聖所で挑発的なパフォーマンスをするパンク・ロックバンド、パスィー・ライオット(写真はジェンセン神父の記事の中に掲載されていたものです。)

*3:米国正教会(Orthodox Church in America)は、ロシアからの移民によって創設された教団であり、元ルーテル派学者のヤロスラフ・ペリカンが後に参入した教団です。

*4:ジェンセン神父の省察記事はhere

*5:2017年のアップデート記事 Another Orthodox Insider Writes of the Threat to the Orthodox Church from Within.も参照。Three Trojan Horses: The Touchstone Archives

*6:More from Fr. Jensen.  Gene Veith's article Changes In The Orthodox Church.も参照のこと。