至高なる三一なるもの、
あらゆる本質、
知識、
善を超越しているもの、
神的智慧への先導者よ、
汝の神秘的知という最高峰へと
われわれの道を導きたまえ。
はるかに理解を超え、
いとも光に輝き、
まことに崇高なる御方、
そこでは純にして、
絶対的、
恒久不変なる神学の神秘が、
隠れし沈黙という
目もくらむほどの神的闇のなかで
ヴェールに覆われている。
神的闇はその強烈さをもって
あらゆる眩耀(げんよう)にまさる光を輝かせ、
触知できず、
目にもみえない
あらゆる美を凌駕せし
栄光の麗をもち、
われわれの盲なる知性を
溢れるばかりに満たす。
*1:〔補足〕否定神学は偽ディオニュシオス・アレオパギテスの書『神名論』『神秘神学』(6世紀頃)で展開されましたが、イエス・キリストと同時代のユダヤ人哲学者で中期プラトン学派のフィロンの著作『カインの子孫』、3世紀新プラトン学派のプロティノスの著作『エネアデス』(「善なるもの一なるもの」)、4世紀の神学者ニュッサのグレゴリウスの『モーセの生涯』にその原型を見出すことができます。
偽ディオニュシオスは「肯定神学」と「否定神学」の二つの道を示します。肯定神学により人が認識する神についての知識は有意義ではありますが、神についての一面的な知識にすぎません。神についての知識は肯定神学と否定神学を併用することによってより深く探求できる、あるいは浄化、照明、合一の道を実践できる、というものです。
『神秘神学』に代表される「ディオニュシオス文書」は、7世紀の告白者マクシモスや8世紀のダマスコのヨアンネスなどに受容され、正教会神学における静寂主義(ヘシュカズム)の成立にも影響を与えました。
さらに偽ディオニュシオスの著作は9世紀のヨハネス・スコトゥス・エリウゲナによりラテン語訳されるとともに、『天上位階論』に対する註解書『天上位階論註解』も著され、以後「ディオニュシオス文書」は西方神学にも東方神学同様に絶大な権威を持って受容されていきました。 トマス・アクイナス、エックハルト、ニコラウス・クザーヌスやドイツ神秘主義にその受容と影響をみることができます。また、14世紀イギリスの『不可知の雲』の匿名の著者によって英語にも翻訳され、17ー18世紀のイギリス神秘主義の黄金期にも影響を与えています。参:否定神学