おお十字架、お前は心を引き裂き、
おお十字架、お前は世界を分裂させる。
神聖なる十字架、苦悶の木。
八福(Beautitudes)に伴う血染めの代価。
王の磔柱。
荘厳なる刻印。
陰鬱きわまる十字架。
神のさらし柱。
神秘の星。
確実性への秘鑰(ひやく)。
Raissa Maritain, O Cross (私訳)
「私のキリスト讃歌は、懐疑の大煉獄を通り抜けてきたものだ。」(ドストエフスキー)
彼は内部分裂と暗黒とあらゆる苦悩を通して、神・人間・世界を信じることを告白した。ドストエフスキーはロシアのニヒリズムの本質を根本的につかんだ。しかし彼が何かを否定したとすればそれはニヒリズムの否定であった。彼は反ニヒリストである。*1
*1:ニコライ・ベルジャーエフ『ドストエフスキーの世界観』p.41-42.