巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

典礼という無尽蔵の源泉から生み出される聖性ーーハッケボルンの聖メヒティルト

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ハッケボルンの聖メヒティルト(ドイツ名:Mechthild von Hackeborn, 1240/41年-1298/1299年 )ザクセンのベネディクト会修道女。学問、知性、人文的書物に関する知識、すばらしく優しい声をもつ彼女は「神の小夜鳴鳥(ナイチンゲール)」と呼ばれていました

 

教皇ベネディクト十六世の240回目の一般謁見演説 ハッケボルンの聖メヒティルトより一部抜粋(引用元

 

祈りと観想が彼女〔メヒティルト〕の生活を養う生きた「土壌」でした。彼女の行ったさまざまな啓示、教え、隣人への奉仕、信仰と愛の歩みを生み出す根源また場はここにありました。

 

『特別な恩寵の書(Liber specialis gratiae)』第1巻の中で、著者はメヒティルトが主の祝日、聖人の祝日、そしてとくに聖なるおとめマリアの祝日に語ったことばを書きとめています。印象的なのは、この聖女が、典礼のさまざまな構成要素を生き、日常生活に生かすことができたことです

 

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『特別な恩寵の書(Liber specialis gratiae)』出典

 

メヒティルトは典礼の祈りの中で、聖務日課、ミサ、そして何よりも聖体拝領をとくに重視しました。聖体拝領のとき、メヒティルトはしばしば脱魂状態となり、主のいとも甘美な愛熱のみ心と深く交わり、驚くべき対話を行いました。この対話の中で彼女は内的に照らされることを願いながら、自分の共同体と霊的姉妹のために特別な執り成しの祈りをささげました。

 

メヒティルトが中心に置くのはキリストの神秘です。おとめマリアは聖性の道を歩むためにいつもこの神秘にとどまり続けたからです。「まことの聖性を望むなら、わが子のそばにとどまりなさい。彼こそはすべてのものを聖なるものとする、聖性そのものだからです」*1

 

メヒティルトの神との親しい交わりの中には、教会も、善行を行う人も、罪人も含めた全世界が存在しました。メヒティルトにとって、天と地は一つに結ばれるのです。

 

メヒティルトの幻視、教え、生涯の出来事は、典礼や聖書で用いられることばを想起させる表現で語られます。そこからメヒティルトが聖書を深く知っていたことが分かります。聖書はメヒティルトの日ごとの糧でした。メヒティルトは絶えず聖書に向かいました。典礼で読まれる聖書を味わい、また聖書の象徴、用語、光景、たとえ、人物から着想を得ました。

 

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出典

 

メヒティルトがとくに好んだのは福音書です。

 

 「福音書のことばは彼女にとってすばらしい糧であり、彼女の心にきわめて甘美な思いを抱かせた。すると興奮のあまり彼女は読み終えることができなくなった。・・・・彼女がこれらのことばを読むしかたは本当に熱意をこめたものであったので、すべての人の中に敬虔な思いが掻き立てられた。

 同じように、歌隊席で歌っていると、彼女は完全に神に没入し、熱情に動かされた。そのため、ときとして彼女は自分の思いを身振りで表した。・・・・また別のときに、脱魂状態になった彼女は、自分に呼びかけたり、自分を揺り動かす人のことばが聞こえなくなり、外的事物に関する感覚を取り戻すのがひどく困難であった」*2

 

メヒティルトの見たある幻視の中では、イエスご自身が彼女に福音を勧めました。イエスはご自分のいとも甘美なみ心の傷を彼女に開いていわれました。

 

「わたしの愛がどれほど大きいかを考えなさい。あなたがそのことをよく知ろうとするなら、福音ほどそれをはっきり表すところは見いだせません。『父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛してきた』(ヨハネ15・9)。福音以上に強くまた優しくこの思いを表したものはありません」*3

 

親愛なる友人の皆様。個人の祈りと典礼の祈り、とくに時課の祈りとミサは、ハッケボルンの聖メヒティルトの霊的生活の根源でした。聖書に導かれ、聖体のパンに養われて、メヒティルトは、常に教会に忠実に従いながら、主との深い一致の道を歩みました。

 

このことはわたしたちをも、主との友愛を深めるように招きます。何よりも日々の祈りと、注意深く、忠実に、積極的にミサにあずかることによって。典礼は霊性の偉大な学びやです。・・

 

ハッケボルンの聖メヒティルトはわたしたちをイエスとおとめマリアのみ心にゆだねます。メヒティルトはわたしたちを招きます。聖母のみ心をもって御子を賛美しなさい。御子のみ心をもってマリアを賛美しなさいと。

 

「ああ、至聖なるおとめよ。御身にごあいさつ申し上げます。もっとも甘美な露が、至聖なる三位一体のみ心からあなたに注がれたことのゆえに。あなたが今永遠に楽しんでおられる栄光と喜びのゆえに、御身にごあいさつ申し上げます。あなたは天と地のあらゆる造られたものよりも愛され、世が造られる前から選ばれたかた。アーメン」*4

 

ー終わりー

 

*1:同:ibid. I, 40

*2:同:ibid. VI, 1

*3:同:ibid. I, 22

*4:同:ibid. I, 45