巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

エリザベス・プレンティスの信仰詩集

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目次

 

はじめにーーエリザベス・プレンティスについて

 

エリザベス・プレンティス(1818-1878)は、有名な讃美歌「いのりまつる」(More Love to Thee, O Christ, 1869、聖歌263)を作った女性です。また彼女は詩作だけでなく、子どもや若者向けの信仰小説も数多く残しています。

 

特に彼女の自伝的小説 Stepping Heavenward--One Woman's Journey to Godliness(「天路に向かいつつ―ある女性の霊的旅路」)は不朽の名作だと思います。

 

彼女の詩からは、主イエスへの一途な愛、わが子を病で次々と失った母親の慟哭、悲哀、そして苦しみの中で見い出す神の慰めといったものがみずみずしい感性と霊性によって読者の心に伝わってくると思います。

 

もっと近くに(Nearer)

 

おおイエスよ、もっと近くにいらしてください。

前にもまして あなたを愛しい方と仰ぎたいのです。

私の魂は切望しています、あなたを慕い求めています。

 

どうかいらして あなたを焦がれるこの心を

ご自身の住み処となさってください。

あなたの美しさに見入りたいのです!

 

なんとものうく けだるいことでしょう。

なんとさみしく みじめなことでしょう。

あなたが御顔を隠される日々は。

 

そして、あなたの愛と恵みの一瞥は

なんとすぐに 悲しみや憂いを

喜びにかえてくれることでしょう

 

もっと近くにいらしてください、もっと近くに。

前にもまして あなたを愛しいお方と仰ぎたいのです。

 

あなたはわが心の喜び、わが心の至福。

もっと近く、もっと近く 

あなたに近づいていきます。

  

あなたの祝福を切に求めます。

ああそれなしには、私はあなたを離れることができません。

 

Elizabeth Prentiss, Golden Hours: Heart-hymns of the Christian life(私訳)

 

 

夕暮れ時に、光が宿る!

 

夕暮れ時に、光が宿る!

ええ、そうです。

 

夜が近づき、影が長くなり、

そうして 太陽がどんどん空から離れていく時、

 

ひんやりとした風が吹きつけ、

大地が薄暗さの中に沈み込んでいく時。

そこに 光が宿ります!

 

昼間のまぶしさの中では 

見ることのできなかった一条の光が。

 

そしてそれは、あなたの孤独な道を照らし出します。

 

ええ、もっとも暗い道のただ中にあって

それはあなたを導き、誘(いざな)い、活気づけます。

 

そこに 光が宿ります!

 

やさしい手が光のこどもたちを引いて寝床に導くように、

あなたも、愛といつくしみと優しさに包まれながら、

導かれていきます。

 

そして疲れ切ったあなたの頭に

やわらかな枕が あてがわれます。

 

そこに 光が宿ります!

 

でもその光を見ることができるのは、

信仰の明るい眼だけです。

 

それは死からその冷気を、その深い悲しみを取り去り、

恍惚とした歓喜の内に、私たちを導きます。

 

目を上げてください!

よみがえられたキリストがここにおられます。

 

あなたを見つめ、あなたのために

太陽のように輝いておられるこのお方が。

 

Elizabeth Prentiss,Golden Hours: Heart-hymns of the Christian life(私訳)

 

彼に在って満ち足りる

 

汝らは彼に在りて滿ち足れるなり。 コロ2:10(文語訳)

あなたがたは、キリストにあって、満ち満ちているのです。 

コロ2:10(新改訳)

 

彼に在って満ち足りる!

おお主よ、私は汝の元に逃れます。

この偉大な真(まこと)を胸に、汝の元に駆け寄ります。

 

涙と笑みが相寄り添い、私は泣いています。

 

このようなお言葉が、

私のような者にも語られているとは!

 

彼に在って満ち足りる!

 

汝のものが完成されるのに、

主よ、私の言葉などなんら必要とされていないのです。

 

賢い棟梁であられる主よ、

汝の御手が、ご自身の計画されし〈建物〉をお造りになられますように。

 

彼に在って満ち足りる!

 

汝に携えていけるものを、私は何ひとつ持ち合わせておりません。

とても欠けの多い、役に立たない者ですから。

 

しかし、神の麗しい御手が私に恵んでくださったものを見て、

人々の心は喜びに躍るでしょう。

 

彼に在って満ち足りる!

 

おお、この日を待ち望みます。

 

貧しく罪ぶかいわが心が、

「自分自身の内にはまったく何もありません。

ただイエス・キリストのうちにあって、私は満ち足り、ここに立っています。」と告白することのできる日を!

 

 

Elizabeth Prentiss, "Complete in Him", Golden Hours: Heart-Hymns for Christian Life(私訳)

 

からからに乾いた人生の砂漠で

 

からからに乾いた人生の砂漠で

あなたは 悲しみ倒れ、動けなくなっている。

 

おお、悲しみをよく知るこの心が

あなたにとって

豊かで 甘美で 満ち足りた泉のようであったら

どんなにかよかったのに。

 

愛しい姉妹よ、こちらにおいで。

苦しむ者だけが知っている抱擁の中で

あなたを抱きしめてあげたい。

 

この心に近づいておいで。

私はあなたをやさしく支え

ため息も 涙も 呻きも受け止めたい。

 

苦悶に次ぐ苦悶があった。果てしのない海の満ち潮のように。

 

だから私につかまって泣けばいい。

ああでも 私があなたに喜び、平安、そして癒しを与えることができる?

苦しみを知る一介の人間に過ぎない私が。

 

いいえ、私にはできない。でも私の主はそれがおできになる。

 

主よ、汝のことを語りたいのです。

どうか私に力強い言葉を与えてください。

 

おお汝の憐れみを覚える時に

感謝の涙がとめどなく溢れますように!

  

悲しみの人イエス。

汝は私に苦悶の理由を教えてくださいました。

どうか私の唇に言葉を与えてください。

  

そうすれば、まだ汝を知らない心に 私はねんごろに語り

悲しめる心に安らぎを与え、汝を知らせることができます。

 

そうです。平安が 不安におののく心に取って代わり

汝の御心という流れに横たわるまで。

 

艱難のうちには栄光があり、

キリストご自身が、うつろで空虚な心を満たしてくださいます。

 

おおイエス!甘美なお方。愛によって私たちを懲らしめる主。

痛むこの心のゆえに 汝に感謝します。

 

なぜなら、これによってのみ私は

汝がどんなに真実でやさしく

美しい方であるかを学んだからです!

 

Elizabeth Prentiss,Golden hours: Heart-hymns of the Christian life (私訳)

 

谷川の流れを慕い求めて

 

追われつつ
谷を 野を 山を 駈けていく。

どこにも避け所はなく 
追っ手は 今にも迫らんばかり。

鹿があえぎつつ 
谷川の流れを求めている。

あえぎ 渇き 
たえまなく求めている。

追われ 
物憂げなこの世に 追われ 
私は駈けていく。

おお 汝のふところ以外に 
どこにも避け所はありません。

ですから 
わが魂は 汝の住まいを求めてあえぎ

汝の栄光をみようと 
わが手を差し伸べているのです。



悲しみ、誘惑、罪が 
私に追い迫り
わが魂に 破滅と死をもたらそうとしている。

 

弱い力をふりしぼり 
私は前に向かって 飛翔する。
渇き つまずき あえぎながら。

地はからからに乾き切っている。 
私の嘆きも。

渇き あえぎつつ あなたを求め 私はひた走る。

悲しみ、罪、誘惑から逃れつつ
渇き あえぎ
おお 神よ!私は 汝を求めます!


Elizabeth Prentis, Golden Hours: Heart-hymns of the Christian life(私訳)

 

人生の夜

 

親愛なる主よ、

「わたしはあなたを見守り、あなたを見放さない」と

あなたは私におっしゃいました。

 

しかし、見てください。

この深く重苦しいものは私の元を離れようとしません。

そしてその陰鬱な手で 私をしかと握ってはなさないのです。

 

そうです。それは、しかと私を握り、引き倒し、 

口を塞ごうとします。

空をつんざかんばかりのわが叫びを。

 

力なく私は あなたの前に横たわっています。

悲しみをたたえた 乾いた目で。  無言のうちに 

 

おお主よ、みこころがなされますように。

 

快活な私の魂は 

この暗い日々、そして この哀切の夜を必要としているのでしょうか。

 

根が地中深くにおろされることで 

豊かで生新な枝が 再び 光に向かって 伸びていく―。

 

おお、これらの枝が、あなたのために少しでも実を結びますように。

 

そして、いつの日か

喜びもなく陰鬱なこの場所に据え置かれたこの日々を

感謝をもって 思い出すことができますように。

 

それらすべては 

あなたの愛の御手によるものであったと。

 

Elizabeth Prentiss,Golden hours: Heart-hymns of the Christian life(私訳)

 

このお方は私のもの

 

おおキリスト、
私はあなたにもっと近づきたいのです。

 

あなたご自身を、
どうか どうか 私に顕してください
そしてこの心を満たしてください

そうすれば わが心は 
あなただけのものとなるでしょう。

一部分ではなく 
あなたのすべてを求めています。

 

あなたは 

私のものなのでしょうか。

 
ああ、私が知られているように 
あなたを知りたい。

胸中にあなたへの愛が燃え立ち 
私は言います。

どうぞ 私の心にいらして 
あなたの住み処となさってくださいと。

あなたの神々しい御顔をあおぎ見るとき
さんさんと太陽の光が 照り輝く。

あなたが 御顔をそむけられるなら
喜びは もはや 喜びでなくなる。

 

夜の暗闇は 昼をおし殺し

たえまない悲嘆のえじきとされる。


むなしい気ばらし、戯れ、、
ああ 私は あなたを見失ってしまった。

あなたを失い 嘆き、そして 
ついにまた あなたの喜びを感ずる。

おお あなたは わがいのち、
わが至福、
わが生きる由(よし)。


この世のどの友より 愛しいお方。

あなたの愛を 
いったいどう語ることができるのでしょう。

そして
私が語らなかったら? 

 

涙でいっぱいの目が 上を見上げ、
私に代わって 乞い願ってくださる天の鳩を 
しかとこの手に引き寄せるとき、

 

すべてを見通す あなたのまなざしが
言葉にならない この祈りを読み取ってくださる。


あなたを これまで以上に 
慕い求めています。

聖く恍惚とした 歓喜のうちに
愛しく 尊い あなたの御名が
私のうちで もっと貴いものとなりますように。

あなたの御約束を想います。
あなたの愛は、 
私の大胆さをお責めになりません


ああ 賛美が 
私の呼吸となりますように

そして肉の命が たえず 死に渡されますように。

あなたは 人目に隠されたいくつかの魂を
燃えるような情熱をもって 
ご自身のものとされました。


あなたが 彼らに与えられたもの――
ああどうか それを私にもお与えください。

彼らの気高い献身 
静かに罪を治める その信仰

 

この地を天国のようにし
あなたの御顔を たえず見上げるその恵みに
私も ならうことができますように。


彼らは 〈この道〉を通って あなたに会いに行きました。
ーー今も巡礼の旅人が歩く道を。

そして すべてを ちりあくたとみなし
永い忍耐をもって
このお方だけを求め 
求め続けました。

痛みと喪失を通して 
あなたの元に向かわせてください。

わが主の十字架の下に ぬかずき
先人たちの跡にならいつつ。



イエス、最愛のお方。
今、あなたの御答えを
感じていますー

あなたは 
私のものであると!


Elizabeth Prentiss, Golden hours: Heart-hymns of the Christian life(私訳)

 

私は悲しみを知っている

 

私は悲しみを知っている 
〈彼女の〉その青ざめた顔
その声、その足音も 
よく知っている。


招かれてもいないのに、
彼女はよく敷居を またいでやって来る。
そして私とひっそり話そうとする。


ずっと彼女が嫌いだった。
彼女を歓迎したことなど 一度もなかった。
彼女に用事を言いつけたこともないし 
彼女に対して心を開いたこともなかった。


そして顔をそむけつつ 冷たく言い放っていた
「おねがいだからここから出て行って」と。

彼女は出ていった。でもまた戻ってきた。

ぱたぱた近くを飛ぶ はとのように
彼女は、しょっちゅう戻ってきた

でも 翼の音が聞こえてきても 
私は彼女に休み場を与えなかった。

こっちに舞い降りて来たがっていたけれど
私は拒絶した。


再三にわたる私のしかめっつらにもめげず
彼女はまた近くに戻ってきた。 

そして あるとき 
ついに口を開いてこう言った。

「私は、あなたの愛するお方の元から
遣わされているんです」と。


その時から 
彼女は 私の大切なお客さまになった。
彼女のいかめしさも だんだんと表情から消えていった。


人生に起こっていることの意味を知ろうとするとき
彼女は私のそばに座り、

キリストが私にとって 
もっと愛しい方になるよう
私を助けてくれる。


でも
彼女の存在によって、主が豊かに与えてくださった宝が
私のもとから 取り去られてしまった

物を言わないお墓の前で
苦悶のうちに ひざまずく私から 
彼女は呻きをしぼりとっているかのよう。


耐えがたい不安という岩の上に 彼女は私を横たわらせ
私をずたずたに引き裂いた。

それも一度ではなく、何回も。


私が身を震わせ 泣き、憐れみを求めるとき
彼女は、主の方を指し示してくれる。

こうして だんだんと痛みに満ちた心は 
やわらぎ、教えられ
私は愛しい彼女の足もとに座り、
彼女にほほえみかける。

悲しみーー
それは 私をむち打ち、私の心を試すために
愛の翼をもって 私の元に遣わされたもの。

そう、それはキリストより遣わされし
尊い使者なのです。


Elizabeth Prentiss, Golden Hours: Heart-hymns of the Christian Life(私訳)