巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

人間の叫びーーアルフレッド・テニソンの信仰詩

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出典

 

目次

 

人間の叫び

 

御名が崇められんことをーーハレルヤ!

汝という無限の理想性(Ideality)!

計り尽くせぬ現実(Reality)!

無限なる御人格(Personality)!

御名が崇められんことをーーハレルヤ!

                     

自分は無だと感じるーーすべては汝のものであり、汝の内に在るのだから。

自分は何かであると感じるーーこれもまた汝より来るもの。

自分が無であることを知っているーーしかし汝はわれわれが存在する者であるべく("to be")我らを助け給うだろう。

御名が崇められんことをーーハレルヤ!

 

Alfred Tennyson (1809-1892), The Human Cry(私訳)

 

砕けよ、砕けよ、砕けよ

 

砕け散るがいい、濤声(とうせい)を響かせて砕け散るがいい。

この冷たい灰色のさざれ石めがけて、おお、大海原よ!

私もお前に劣らず、声の限りをつくして、

この胸のたぎり立つ思いを叫びたい!

 

あの漁夫の子の心は、喜びに満ちているに違いない。

遊びながら、妹と一緒に歓声をあげている。

おお、あの若い船乗りの心も、喜びに満ちているはずだ、

入り江に小舟を浮かべ、あんなに楽しげに歌っている。

 

沖合い遥かに、堂々たる船が

丘のふもとの港(haven)をめざし悠然と進んでいる。

しかしあゝ、私にはもう、消え去った友の手を握ることも、

今や黙した友のあの声をもはや聞くこともできない!

 

砕け散るがいい、濤声を響かせて砕け散るがいい。

断崖のふもとに、おお大海原よ!

だが、亡きものとなったあの優しい恵の日々は、

もう二度と私のところには戻ってこない!

 

Alfred Tennyson, 'Break, break, break'(私訳)

 

「追憶の詩」へのプロローグ

 

神の強き御子よ、永遠の愛なる主よ!

私たちは、貴方の御顔を見たことはありません。

ですが、信仰により、ただ信仰によってのみ、

貴方を愛しております。

ーーそうです、証明しえないものを喜んで信じているのです。

 

主よ、この太陽も、そしてこの月も、貴方のものです。

貴方は人間の生命を、そして獣の生命を造られました。

いや、実に死をも造られました。

ですから、主よ、御自分が造られた髑髏(どくろ)を

踏みにじっておられるのです。

 

主よ、貴方は私たちを地上で空しく腐らせようとはされません。

人間は自分が造られたわけを知らず、

造られたのは、死ぬためではないと考えています。

ですが、まさに死ぬためにこそ、

貴方は人間を造られたのです。御心は正しいのです。

 

貴方は人にして神でいまし給い、いと高く、

いと聖き人性を備え給うたお方であるといわなければなりません。

いわれは分かりませんが、私たちの意志は私たちのものです。

そうです。--貴方の御意志と一つにならんための。

 

私たちのささやかな哲理が、時としてもて囃(はや)されます。

確かに、もて囃されはしますが、たちまち消えてゆきます。

こういった哲理は、汝から洩れてくる木漏れ日なのです。

光の源である汝とは到底比べものにはならないのです。

 

私たちはただ信じるだけで、汝を知ることはできません。

人間の知識は、見えるものについての知識なのですから。

それでも、知識が汝からの賜物であり、暗黒の中の光であることは

確かなのです。この知識を大いならしめてください。

 

そうです。この知識をいやましに大いならしめるとともに、

それにもまして、畏敬の念を大いならしめてください。

やがて、私たちの心と魂が、知識と信仰が調和し、

昔のように一つの調べを奏することができますように。

 

否、昔よりもっと大いなる調べを奏することができますように。

私たち哀れな愚者は、畏れることを忘れ、汝を嘲るのです。

主よ、愚かなる私たちを助け、心驕れるこの世界を助け、

汝の光に浴することを得さしめ給えーー光なる主よ!

 

Alfred Tennyson, Prologue to In Memoriam(平井正穂訳)