巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

愛しい主人の帰りを待ちわびつつ一人過ごす時間にーーアン・ブラッドストリートの信仰詩【17世紀ニューイングランド】

Related image

アン・ブラッドストリート(1612-1672)。英国の裕福な清教徒家庭に生まれる。サイモン・ブラッドストリート氏と結婚した後、船で新大陸へ。それまでの比較的快適な生活から一転して厳しい荒野での生活が始まる。食糧難や病気、8人の子の子育て、家計のやりくり等さまざまな試練を通される中で、信仰の刷新を経験。彼女の信仰詩には、新しく見い出した信仰、家庭人としてのさまざまな日々の葛藤のことが素朴にのびやかに綴られている。

 

目次

 

 

Anne Bradstreet, In My Solitary Hours in My Dear Husband his Absence,(拙訳)

 

おお主よ、汝は私の心の呻きをご存知であられ、

流れ落ちる涙を見ておられます。

あらゆる労苦、願い、恐れ、、それらはすべて汝の前にあります。

 

汝はわが神、わが助けであられます。

喪失と病が私を襲いましたが、

汝の支えにより、私は持ちこたえることができました。

 

汝が私と共に宿ってくださるので、

わが魂は汝とお話することができます。

ひそかなる場所に私は汝を見い出し、

そこに跪きます。

 

愛しい主人は今遠くに在り、

私たちは互いに離れていますが、

私にはさらに愛しい御方がおり、

この御方の慰めは〔地上の主人のそれを〕遥かに凌ぎます。

 

おおわが神、私の心にとどまり続けてくださり、

か弱いわが魂(たま)を支えてください。

どうしていいのか途方にくれる時、

私は汝の憐れみにすがります。

 

病みがちな体や心の弱さを汝はご存知です。

この地上にあって、汝からいただくもの以外、

わが慰めはどこにもありません。

 

汝は私に子どもたち、そして朋友たちを

与えてくださいましたが、

彼らを通し私が汝ご自身をみないのなら、

それらは喜びではなく、むしろわざわいとなります。

 

わが救い主、わが心を照らしてください。

汝の内にのみ、求めるすべてのものがあり、

そこで私は満ち足りるでしょう。

 

主人が無事に帰ってくることができますよう切にお祈りします。

おお主よ、前にそうしてくださったように、

この嘆願をもどうか聞き入れてください。

 

〔主人が帰ってきた後に〕私たちは、汝のご慈愛を共に語り、

汝を褒めたたえるでしょう。

そして以前にもまして、汝に仕える者になるでしょう。

 

汝が助けてくださらなければ、私は弱いままですが、

しかしもしも汝が支えてくださるなら、

私は自分の負債(ローマ1:14)をきっと汝にお返しするでしょう。

 

小さな翻訳後記

家にいて、夫の無事を祈り、彼の帰りを待ちわびる妻アンの心と信仰が、素朴な表現を通し、よく伝わってきます。400年という歳月を経ても、聖書的女性像の根幹およびスピリットは不動であることを感じます。

 

アンの詩から教えられたのは、(物理的・精神的)"家" にいる女性の基本的姿勢が「待つ」ことである、という事でした。常にそこにいて心のホームを開いている人。それは時に困難を伴う道かもしれません。そこにいてただじっと待つという "採算のとれない" 平凡さ、狭さは、現代の世ではやり方一つでいくらでも変更・拡大させることが可能だからです。でも、、古のその「狭さ」の内にこそ、私たち女性にとっての貞節と喜びの泉があるというのが、昔も今も変わらない奥義だと思います。