巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

「創世記1-3章によれば、男性のかしら性(male headship)というのは、人類が堕落する以前には存在していませんでした。ですから、これは罪がもたらした負の産物です。」という主張はどうでしょうか。【前篇】

Wayne Grudem, Evangelical Feminism and Biblical Truth, chapter 3

 

これは、私が知るすべての対等主義者が皆一様に論じている根本的主張です。例えば、アイダ・スペンサーの著 Beyond the Curse(「呪いを超えて」)というタイトルそれ自体が、この主張を体現しています。エバのことについて、スペンサーは次のように書いています。

 

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「エバが被った呪いとは、彼女が支配され、倒錯的に(perversely)夫を恋い慕い、夫は彼女を支配するようになったことです。彼女は自分の夫に支配されたいとむしろ望むようになり、夫は彼女のその願いに応じるようになったのです、、こういった統治は、エバの切望および堕落の結果引き起こされたものです。」Spencer, Beyond the Curse, 36.

 

ギルバート・ビレジキアンもまた同様に、アダムとエバのことについて次のように書いています。

 

「彼女の願いを満たし、相互に助け合うような家庭環境を育む代わりに、アダムは彼女を支配するようになったのです。アダムの統治が堕落の結果生じたものであることを鑑みるに、〔創3:16の〕言明のもっとも明瞭な意味とは、堕落以前、アダムはエバの統治者ではなかったということです。」Bilezikian, Beyond Sex Roles, 55, 264n12.

 

レベッカ・グルースイスはこう言っています。

 

「実際、彼らが罪に陥り、神が女に、『彼は、あなたを支配することになる』(創3:16)と宣言する以前には、どちらかの配偶者が、もう一方の配偶者を治めるという記述はどこにもなかったのです。神のこの宣言は、掟としてではなく、彼らの罪の結果として言明されたものです。」Groothius, Good News for Women, 123. (他の多くの対等主義著述家も同様のことを述べています。例えば、Brown, Women Ministers, 51,55.)

 

回答1.

堕落以前に、男性のかしら性(male headship)が存在していたということを立証する根拠が少なくとも10要素あります。

 

私は第1章で、それらの10要素について詳説しました。今ここで各点を要約します。

 

1.秩序(order):アダムが最初に造られ、次にエバが造られた(創2:7、2:18-23、1テモテ2:13で述べられている順序に留意。)

 

2.代表(representation):エバではなく、アダムが人類を代表するという特別な役割を担った(1コリント15:22、45-49、ローマ5:12-21)。

 

3.女に対する命名(naming of woman):アダムがエバと命名した。エバがアダムに命名したのではない(創2:23)。

 

4.人類に対する命名(naming of the human race):神は人類を「Woman」とは呼ばず、「Man;אָדָ֔ם, adam 」と名づけた。

 

5.主要な説明責任(primary accountability):堕落の後、神はまずアダムに説明責任を求めた(創3:9)

 

6.目的(purpose):エバはアダムの助け手として造られた。アダムがエバの助け手として造られたのではない(創2:18、1コリ11:9)。

 

7.衝突(conflict):罪の呪いは、以前から存在していた〔男女の〕役割に歪曲をもたらしたのであって、新しい役割を導入したのではない(創3:16)。

 

8.回復(restoration):新約聖書におけるキリストにある救いは、創造の秩序を再確認(reaffirm)した(コロサイ3:18-19)。

 

9.奥義(mystery):創造のはじめより、結婚は、キリストと教会の関係を表す像であった(エペソ5:32-33)。

 

10.三位一体とのパラレル関係(parallel with the Trinity):男女間の平等・相違・一致は、三位一体の神〔の位格の間における〕平等・相違・一致を映し出している(1コリ11:3)。