巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

アンチノミアニズム(無律法主義)②-知られざるその脅威

Finny Kuruvilla, King Jesus Claims His Church, Anchor-Cross Publishing, Massachusetts, 2013, p107-108より一部引用

執筆者:F・クルヴィラ師

 

現在、キリスト教界の中で猛威をふるっている恐ろしい異端の存在に、ほとんどの人は気づいていません。この異端は、専門的な用語では、アンチノミアニズム(antinomianism)と言い表すことができます。

 

この語は無法もしくは法に逆らうといった意味のギリシア語 ἄνομος (anomos) に由来しています。アンチノミアニズムは、「えり好み的ないし部分的な従順」と定義することができると思います。

 

この不法主義を推進する人たち(antinomian)は一般に、(イエスさまの掟のうち)ある物は受け入れがたい、もしくは難解すぎると判断します。そしてそういう掟を無視したり、言い逃れしたりするのです。

 

山上の垂訓の終わりの方で、自分は主に従う者だと思っている人たちがやがて主に咎められるだろうとイエスはきびしい預言をしています。なぜなら、彼らは不法・無律法主義者(antinomian)だからです。

 

「わたしに向かって、『主よ、主よ。』と言う者がみな天の御国にはいるのではなく、天におられるわたしの父のみこころを行なう者がはいるのです。その日には、大ぜいの者がわたしに言うでしょう。『主よ、主よ。私たちはあなたの名によって預言をし、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって奇蹟をたくさん行なったではありませんか。』しかし、その時、わたしは彼らにこう宣告します。『わたしはあなたがたを全然知らない。不法をなす者ども【→ἀνομίαν (antinomians)】。わたしから離れて行け。』(マタイ7:21-23)

 

「えり好み主義」と「欺き」が、アンチノミアニズムの顕著な特徴です。また、パリサイ人は、人間のこしらえた多くの法を設けましたが、彼らは結局、神の法を否定し、不法を行なう者(antinomian)と呼ばれるに至りました(マタイ23:28)。「なぜそうなのだろう。」と不思議に思う方がいらっしゃるかもしれませんが、律法主義とは、

 

1)自分の善行によって救いを得ることができると信じること、もしくは

2)神の好意を得んがために、人間の考え出した掟や教説を付け加えること、と定義できると思います。

 

そしてどちらの立場も危険なのです。律法主義は、アンチノミアニズム(無律法主義)に対する防衛とはならないのです。逆説的ですが、律法主義はそれをむしろ助長するのです。アンチノミアニズムは終わりの日に、勢力を増すだろうとイエスは預言しておられます。

 

「また、にせ預言者が多く起こって、多くの人々を惑わします。不法【→antinomianism】がはこびるので、多くの人たちの愛は冷たくなります(マタイ24:11-12)」。

 

注目すべきことに、最後の反キリストは、文字通り、the man of antinomianism(ο ανθρωπος της ανομιας, man of lawlessness, Ⅱテサロニケ2:3)と呼ばれているのです。訳注*

 

アンチノミアニズムは、イエスのご統治にこぶしを突き上げる、人類の最後にして最も脅威ある異端だということがいえます。それはイエスの、王としての統治に逆らっているため、福音自体に逆らってもいるのです。

 

 訳注:

Ⅱテサロニケ2:3の「不法の人, the man of lawlessness」ですが、ギリシャ語原典を調べてみると、底本によって、「ο ανθρωπος της ανομιας」である場合と、「ο ανθρωπος της αμαρτιας」の場合と二種類ありました。(参照サイト、ココ

① ο ανθρωπος της ανομιας

Nestle GNT 1904, Westcott and Hort 1881, Westcott and Hort/[NA27 variants], Tischendorf 8th Edition

② ο ανθρωπος της αμαρτιας

RP Byzantine Majority Text 2005, Greek Orthodox Church 1904, Scrivener's Textus Receptus 1894, Stephanus Textus Receptus 1550

 

*福音主義フェミニズムとアンチノミアニズムの相関性についての考察記事