静寂な調べに合わせ、人間の心にやさしさと力強さをもって流れ込んでくる詩篇歌(Psalmody)は、天の都をめざす巡礼者の「旅の歌」としてまことにふさわしいものだと思います。
マルティン・ルターは、1528年に、「詩篇への序言」を記していますが、それを読むと、「過ぎ去った時代には、、この詩篇が、押入れの下積みにされて人目に触れなくなり、これをただしく理解する者も稀になった。」
「さきの暗黒時代には、、誰が詩篇をただしく理解し、、読み聞かせてくれたであろうか。」とあり、去る中世時代、詩篇が人々の霊的生活の中で、もはや本来あるべき位置を占めなくなっていた事実がうかがわれます。
そこに改革者ルターは、回復の息吹をもたらそうと、熱を込め次のように語っています。
「もしあなたが、活きいきした色彩と姿とをもって、小さな像に描き出された聖なるキリスト教会を見たいと願うなら、詩篇をとりあげなさい。
そうすればキリスト教とは何かをあなたに示す立派な透明な純粋な鏡を得られるであろう。」
「詩篇は、キリストの死と復活とをかくもはっきりと約束し、その御国と全キリスト教界の現状と本質を予示しているほどに、貴重で且つ愛すべきであり、全聖書中にあるすべてのことがもっとも美しくもっとも簡潔に要約され、立派な『エンキリディオン』言わば虎の巻とされ備えられているので、これを小さな聖書と名づけたいほどである。」
「人間の心は、世界の四方から暴風の吹きすさぶ、荒海に漂う小舟のようなものである。、、しかし、詩篇のなかの多くは、あらゆるかような嵐の中で、かような真面目な語りかけ以外の何であるか。
讃美の詩や感謝の詩のもつよりもより美しい、喜びについての言葉がどこに見いだされるか。そこにあなたは、あらゆる聖者の心のうちを見る。
美しい楽しい花園においてのように、否、天においてのように、そこにはやさしい愛すべきほほ笑みつつある花が、神に対するその慈愛の故に、あらゆる美しい喜びにみちた思想によって、ほころび開いているのを見る。
さらにまた、あなたは哀愁の詩のもつよりも、より以上に深い悲しみにみちて泣き叫ぶ、悲哀についての言葉をどこに見いだすだろうか。
、、もしかような言葉が自分に降ってきて、自分と調子を合わせ、自分が聖者たちの仲間に加えられ、彼らがすべてのその歌声を共にし、すべての聖者に行なわれるように、彼にも行われることが確かめられるとしたら。
さらに自分が神に向かって、信仰において起こるに違いないことを、彼らがなしたと同じように語ることができるとしたら!」
詩篇歌は、現在、私の霊的生活および個人礼拝の中でも、もはや欠くことのできないもの―霊的宝―となっています。
旋律をともなってみことば(Λογος)が自分の魂の内に「宿り(dwell)」、「住まわれ(ενοικω)、コロ3:16」、それに呼応するかのように今度は、みことばが、礼拝者のほとばしる喜びと共に「讃歌」の形で口ずさまれ、歌となって主に捧げられる。。
聖であられ、イスラエルの賛美を住まいとしておられる(詩22:3)主、地上の礼拝においても、天上の礼拝(黙5章)においても、「賛美を受けるにふさわしい方」(黙5:12)である私たちの偉大なる神を讃え、この方に栄光を帰します。
追記:詩篇91:1-6を歌い、黙想する
1 He that doth in the secret place of the most High reside,
Under the shade of him that is th' Almighty shall abide.
(いと高き方の隠れ場に住む者は、全能者の陰に宿る。)
2 I of the Lord my God will say, He is my refuge still,
He is my fortress, and my God and in him trust I will.
(私は主に申し上げよう。「わが避け所、わがとりで、私の信頼するわが神。」と。)
3 Assuredly he shall thee save, and give deliverance
From subtle fowler's snare, and from the noisome pestilence.
(主は狩人のわなから、恐ろしい疫病から、あなたを救い出されるからである。)
4 His feathers shall thee hide; thy trust under his wings shall be:
His faithfulness shall be a shield and buckler unto thee.
(主は、ご自分の羽で、あなたをおおわれる。あなたは、その翼の下に身を避ける。主の真実は、大盾であり、とりでである。)
5 Thou shalt not need to be afraid for terrors of the night;
Nor for the arrow that doth fly by day, while it is light;
(あなたは夜の恐怖も恐れず、昼に飛び来る矢も恐れない。)
6 Nor for the pestilence, that walks in darkness secretly;
Nor for destruction, that doth waste at noon-day openly.
(また、暗やみに歩き回る疫病も、真昼に荒らす滅びをも。)