巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

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反マリア(Anti-Mary)の台頭――現代社会における女神崇拝

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セオトコス(聖母マリア様)のイコン


『女神 聖と性の人類学』(女神研究序論)の中で田中雅一教授は現代における女神崇拝について次のように概説しています。

 
「現代の女神への関心がフェミニズムと密接に関係しているということは否定できない。それはアメリカ合衆国において1970年代から盛んになったというフェミニスト神学や魔女術(witchcraft)あるいはネオ・ペイガニズム運動、さらにより一般的な意味を含む霊性フェミニズムあるいはフェミニスト霊性運動である。これらの運動は相互に密接に関係しているが、既存のキリスト教世界への批判、近代科学万能主義、人間中心主義あるいは近代資本主義社会批判という点で共通しており、キリスト教が生まれる以前の宗教や社会を理想とし、自然との新たな関係を模索する。そこでは具体的な政治運動よりも精神的・身体的な変革が強調されている。それは、中世の魔女裁判で弾圧されたのはまさにこうした女性中心の宗教であったとし、近代とは男性を中心とする個人主義的な競争原理が支配する社会であると捉える。こうした視点から新たな宗教運動のシンボルとして住目されたのが女神である。」*1 

 

さらに、「欧米ではキリスト教、父権主義の反動から女神信仰への回帰・復権が認められたが、そのような流れの中でヒンドゥー教における女神崇拝が着目されるようになった」と田中教授は指摘し、次のように述べています。


「ヒンドゥー女神が新たな女神崇拝の核となる理由として、ヒンドゥーのイコンの中には両性的なものがあることを挙げている。すなわち、抱擁・性交のイコン(双神像)や、半陰陽的なものが多いこと、さらに一つの神格が男女どちらの性をもとるということである。これらは男性中心のシンボル体系を修正するために有効であると〔リタ・〕グロスは考える。」*2


アナリサ・メレリー女史は、ヒンドゥー教のカーリー女神こそ今日私たちが必要としているフェミニスト・イコンであると主張しています。「カーリー女神はーー誰に許可を求めることなくーー自己実現していく、そのような限りなき無限の実存的自由を体現しています。」

 

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カーリー女神(出典


デイビッド・パトリック・ハリー氏(東方正教)はこのビデオの中でカーリー女神のイコンが表象するシンボリズムを解説しつつ、夫シヴァを足元に踏みにじり、血に飢え渇き、子をもうけることなく霊的な次元において人々を支配する「母」としてのこの像が、現代西洋フェミニズムが目指しているものを良く表象していると指摘しています。

 

さらにカリー・グレス女史(カトリック)は、著書『Anti-Mary Exposed』の中で、こういった一連の諸霊や諸神を聖母マリア様に反立する「反マリア(Anti-Mary)」として定義し、次のように分析しています。

 

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「女性たちはこれまでもずっと平等と尊厳を願い求めてきました。しかしながら今日の文化はそれをマリア様の恵みを通して求めてはいません。その反対に、現代文化はこの‟平等と尊厳”をマキャベリ的悪徳を通し獲得しようとしているのです。――憎悪、恫喝、癇癪、虐め、むき出しの感情、ロジックの欠如。。反マリア精神(anti-Mary)の特徴を帯びたこれら全ての徴が女性の最大の賜物ーー知恵、思慮、忍耐、泰然とした平静、落ち着き、直観、社会という織物を紡ぎ合わせる能力、深く満ち満ちた神との関係ーーを短絡化し損わせるということを悪魔は熟知しているのです。」*3


「この数十年、私たちはまことの女性たちの内に存在するマリア様のイコンが巧みに消されつつあるのを目撃しています。まず経口避妊薬が導入され、その後、中絶の合法化がそれに続きました。現在、母親業(マザーフッド)は逃げ場のない状況に追い込まれています。子供が二人の男性によって養子縁組されても社会の大勢はもはや驚きません。それほどまでに『母親であること』はもはや無くても済むものとして捉えられつつあるのです。」*4


またカーリー女神、フラの女神*5、パチャママ女神等はいずれもnudity(ヌード性)を表象しています。これらの女神に関わっていこうとする個人や宗教グループの中で性やモラルに関する伝統的キリスト教の教えが弱体化し、それに代わって異教主義的モラルが教理・実践双方において次第に浸透していくという現象も注目に値すると思います。*6

 

youtu.be

 

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パチャママ(出典

  

昨年、ヴァチカン聖所にマリア様ではなく反マリアを表象するパチャママ女神像が担ぎ込まれたことはまことに象徴的な出来事でした*7。神は侮られるような方ではありません(ガラ6:7)。人は種を蒔けば、その刈り取りもすることになります(7節)。偶像礼拝は神に対する大罪です。

 

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カーリー女神像(出典


「あなたたちもこの地の住民と契約を結んではならない、住民の祭壇は取り壊さなければならない、と。しかしあなたたちは、わたしの声に聞き従わなかった。なぜこのようなことをしたのか。わたしもこう言わざるをえない。わたしは彼らを追い払って、あなたたちの前から去らせることはしない。彼らはあなたたちと隣り合わせとなり、彼らの神々はあなたたちの罠となろう。」(士師記2章2-3節)


マリア様と、彼女に敵対する反マリアーー。どちら側につくか、全てを見通す神の目は私たちの上に注がれていると思います。


ー終わりー

 

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