巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

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置き換えられた「サクラメント」――カトリック・カリスマ運動は「刷新」それとも「自己矛盾」??

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カトリック・カリスマ刷新集会出典


ローマ・カトリック弁証家のマイケル・ロフトン師が「カリスマ(ペンテコステ派)運動」に関し概説しておられます。

 

www.youtube.com

 

ロフトン師はカリスマ派の教会に通っていたお父様に連れられ、小学校高学年の頃、初めてプロテスタントのカリスマ派集会に行ったそうです。「カリスマ派といっても種類は様々ですので、私の説明がすべての形態に当てはまるとは限りません」と断った上で、彼は現代カリスマ運動の教理・実践が、実質的にいって、歴史的キリスト教における「秘跡(サクラメント)」の置き換え(substitution)であるということを解説しています。

 

また、ロフトン師は1967年に発生したローマ・カトリック教会内の聖霊運動「カトリック・カリスマ刷新*1」が、伝統的カトリシズムにおける秘跡理解に照らして考えた場合、本来、親和性を持たない・持ち得ない自己矛盾した立場であるということを語っておられます。そのような内部からの批判を見越してでしょうか、カトリックカリスマ刷新側は、『聖霊と教会(カトリック・ペンテコスタリズム)』という書物の中で次のように自己を定義をしています。

 

カトリックカリスマ刷新はプロテスタントのペンテコステ派とカリスマ運動の影響を受けてはいるが、教義的にはプロテスタントのカリスマ運動の概念とは異なる。カリスマ運動のように「聖霊のバプテスマ」を新しい体験として考えるのではなく、秘跡(サクラメント)において受けたバプテスマの「実際化」であり、恵みの「確認」であるとする。『聖霊と教会(カトリック・ペンテコスタリズム)』より*2

 

しかしながら、ロフトン師が説明しておられるように、カリスマ運動の起りは1900年頃に米国メソジスト・ホーリネス教会の中から始まったペンテコスタリズムにあり、ペンテコスタリズムはプロテスタント運動の一部です。つまり、カトリックカリスマ刷新側が、いかに「聖霊のバプテスマ」というペンテコステ派ドグマを「秘跡において受けたバプテスマの『実際化』である」とカトリック的なフレーバーで定義し直しているとしても、伝統的カトリシズム秘跡の否定置き換えの上に構築されているペンテコスタリズムのDNAはカトリック・カリスマ運動の中に継承されているということではないかと思います。

 

2019年の統計によれば、カトリック教徒の三分の二に当る信徒たちが、カトリック教会の基本教義である「エウカリスチアにおけるキリストの現存」をもはや信じていないそうです。*3

  

言い換えますと、現在、カトリック教会の三分の二に相当する人々が、エウカリスチアという秘跡教理においてすでに現代プロテスタント化しているということだと思います。教義におけるプロテスタント化がエートスにおけるプロテスタント化につながってゆくことは言うまでもありません。エートスにおける漸進的プロテスタント化ーー、それは、歴史的カトリシズムの漸進的終焉・消滅を意味しています。カトリック・プロテスタント内でエキュメニカル運動を促進している人々にとり、カトリック・メインストリームが現代プロテスタンティズムに融合・吸収されていっているという事実は ‟グッド・ニュース” であるに違いありません。*4

 

2003年の時点で、カトリック・カリスマ運動は世界の230か国以上に広がり、1億2000人に及んでいるという統計が出ていますが *5、「(プロテスタント)カリスマ運動」に対するローマ・カトリック教会の門戸開放は、カトリック教会の「刷新」でしょうか、それとも、矛盾をはらむ「自己破壊」でしょうか。あるいは答えは両者のどこか中間にあるのでしょうか。*6

 

ー終わりー

 

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*1:  

www.youtube.com ↑カトリック・カリスマ刷新集会  

www.youtube.com ↑カトリック・カリスマ刷新集会(ドイツ)

www.youtube.com ↑カトリック・カリスマ刷新集会

*2:引用

*3:

www.youtube.com

*4:  

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*5:参照

*6:北米正教会の一部でも同様の「門戸開放」が起こっているということをセラフィム・ローズ修道士は、『Orthodoxy and the Religion of the Future』という著書の中で指摘し、この流れに飲まれないよう読者に警告しています。

↓ウクライナ東方典礼カトリック教会内のカリスマ運動に関するビデオ

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