巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

こんなに面白いギリシャ語の学び方があるんだ!ーー創造的で楽しい聖書ギリシャ語学習法

f:id:Kinuko:20180603232053p:plain

出典

 

目次

 

今、コイネー・ギリシャ語がおもしろい!

 

近年、コイネー・ギリシャ語の学習法がどんどん面白くなってきています。

 

トリニティー神学校新約聖書学のコンスタンティン・R・キャンベル教授は、2015年にAdvances in the Study of Greek: New Insights for Reading the New Testamentという著書を出版しました。

 

そしてキャンベル教授はその本の第9章全部を丸々「発音」に当てた上で、エジプトでのパピルス発見に伴うヘレニズム期ギリシャ語の資料や音声学の発達により、現在、聖書ギリシャ語学会や神学校でのコイネー・ギリシャ語発音が、従来のエラスムス式から、復元版発音法(もしくは現代ギリシャ語式発音法)に着実にシフトしつつあることを明示しています。

 

f:id:Kinuko:20180603232213p:plain

 

たしかに復元版発音法によるギリシャ語は、現代ギリシャ語にもかなり近く、聞いていてほとんど違和感がないので、生きている言語との直接的連続性をよりリアルに感じると思います。

 

言語学者のランダル・ブース氏は、この復元版発音法によるギリシャ語教育を推進しておられますが、音声、リズム、歌、ビジュアル教材を積極的に取り入れた彼の古典語教育法はギリシャ語**といわずヘブライ語*といわず、クリエイティブで面白く、これからの世代の人々に最適なのではないかと思います。

 

スターウォーズのヨーダと共に、ギリシャ語のBe動詞を学ぼう!

 

それでは、ブース氏の元で学んだ人々が作ったビデオを、ご一緒に観てみることにしましょう。下は、N・J・エリクソン氏の制作したギリシャ語のBe動詞導入のビデオです。

 

なんと、スターウォーズのヨーダや、ロード・オブ・ザ・リングのゴラムたちが登場してきますよ!神学校のギリシャ語教室で、担当の先生がこんな楽しいパフォーマンスをしてくださったら、生徒たちはきっと大喜びだろうと思います。

 

 

マタイ5章をジェスチャー付きで朗読する

 

それから、次のビデオは、ユージン・デヴリース氏が復元版発音法で、マタイの福音書5:38-48を、ジェスチャー付きで朗読しています。この方は若手の牧師さんなのかもしれませんね。なんだかこの方の一生懸命さがかわいらしくて、思わず笑ってしまいました。

 

 

 

前置詞はぬいぐるみたちにお任せ♡

 

それから次は、N・J・エリクソン氏の制作したギリシャ語の前置詞ἔμπροσθεν/πρὸ καὶ ὀπίσω(前/後ろ)のビデオなのですが、この中に登場するぬいぐるみが本当にかわいいです!

 

こういう感じで、ビジュアルでキュートな前置詞の導入があったら、ギリシャ語の学習は格段に楽しく身近なものになるのではないかと思います。

 

 

コイネー・ギリシャ語で「♪主われを愛す」を歌ってみよう

 

それから最後に、讃美歌「♪ 主われを愛す」を、エリクソン氏がコイネーに訳して、歌っているビデオをご紹介しますね。

 

Ἰησοῦς ἀγαπᾷ με, οἶδα τοῦτο· ἡ γὰρ γραφὴ κηρύσσει. Παιδία ἐισὶν αὐτῷ, ἀσθενοῦσι ἀλλ’ ἰσχύει (δύναται) ναὶ, Ἰησοῦς ἀγαπᾷ με, ναὶ, Ἰησοῦς ἀγαπᾷ με, ναὶ, Ἰησοῦς ἀγαπᾷ με, ἡ γραφὴ κηρύσσει.

 

音(オト)、抑揚、リズムーー言語の不思議

 

私は幼い頃からものまねが大好きで、学生時代には、インドの友人たちとの交流を通し、インド英語のものまねも割かし上手くできるようになっていました。

 

皆さんはご存知かと思いますが、(南)インドの人々は話す時に頭を左右に振ります*

 


インド式の英語発音をしながら私が発見したのは、インド英語の発音や抑揚やリズムで話すと、自然に頭を左右に振りたくなるという現象でした。なぜそうなるのかは分かりません。でもインド英語のオトや抑揚が南インド風のあのジェスチャーと絶妙に調和しているのだろうということだけは分かりました。

 

音声学の発達により、新約聖書が書かれた時期のギリシャ語の発音が現在、かなりの程度で正確に復元されつつあります。これは私たちクリスチャンにとって本当に喜ばしいことではないかと思います。聖書のことばは生きており、コイネー・ギリシャ語も一般の人々が話す生きた言語でした。そして、その活き活きしたしたことばの旋律が今また蘇りつつあります。この進展は、21世紀に生きる私たちキリスト者に贈られた神様からの贈り物なのではないでしょうか。感謝します!

 

関連記事

 

↓ 東京基督教大学のランダル・ショート教授が、現代ギリシャ語式発音で、新約聖書ギリシャ語を教えておられ、そのレクチャーをyoutbubeで公開していらっしゃいます。

Allen, W. Sidney. Vox Graeca: A Guide to the Pronunciation of Classical Greek. Third edition. Cambridge: Cambridge University Press, 1987.

Buth, Randall. “Ἡ Κοινὴ Προφορά: Notes on the Pronunciation System of Koiné Greek.” Available at www.biblicallanguagecenter.com/koine-greek-pronunciation.

Caragounis, Chrys. The Development of Greek and the New Testament: Morphology, Syntax, Phonology, and Textual Transmission. Grand Rapids: Baker, 2006 [Tübingen: Mohr Siebeck, 2004].

Gignac, Francis T. A Grammar of the Greek Papyri of the Roman and Byzantine Periods. Volume I: Phonology. Milano: Istituto Editoriale Cisalpino, La Goliardica, 1976.