巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

詩篇歌のベーシックな旋律(tune)を覚え、複雑な時代に、シンプルに神とつながりましょう!

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家の中にいる時だけでなく、コンパクトな詩篇歌一冊を手に携え、公園や海辺、山の頂で神のことばを歌い、神に賛美を捧げるひとときは、信仰者にとってなんという喜び、そしてやすらぎでしょうか。

 

情報コメンテーターのニコラス・カー氏が2011年に出版した「The Shallows: What the Internet Is Doing to Our Brains(薄っぺらさ:インターネットが私たちの脳に為していること)」という警告の書が近年大きな反響を呼んでいます。

 

 

 

情報過密の時代に生きる私たちにとって、神の前に「静まる」ことは、霊的にも、物理的にも、環境的にもますます難しくなってきているように感じます。

 

ワンクリックで多くの有益な情報を得ることができる反面、ーー本来、時と熟成が必要とされるーー二者間の「関係性」が悲劇的なほど「効率よく」生成・消滅・処理されていっています。

 

二者間のつながりは、必ずしも両者がonlineであることによって保持されるわけではなく、「チャット」や「いいね!」や実際的会話の「頻度」によって計られるものでもないと思います。ある種の交わりにおいては、むしろ沈黙と相手に対する祈念こそが最善のコミュニケーションである場合もあり得ます。

 

詩篇歌の旋律(tune)

 

このサイトをみていただくと、そこに詩篇歌のリストが出てきます。そして各詩篇の後に、(Tune: St Kilda)(Tune: Howard)とかいった見慣れない表記があるのに皆さんお気づきになると思います。

 

これは「この詩篇を歌う時、私たちはこの旋律(メロディー)を使っていますよ」という意思表示なのです。ですから、例えば、前にご紹介しました詩篇歌36編はどのtuneだったかと申しますと、Land of Restと名づけられた旋律でした。↓これです。

 


それで何回かこの詩篇36編をLand of Restの旋律で歌っていると、自然に私たちはこのメロディーに馴染んでいきます。楽譜が読める・読めないに関係なく、だれでも皆、このメロディーを口ずさむことができるようになります。

 

それでは、同じサイトの詩篇61篇の項をみてみてください。Psalm 61 (Tune: Land of Rest)と書いてあります。つまり、「詩篇36編を歌うのと同じメロディーでこの曲も歌うことができますよ」ということです。それでは詩篇61篇をLand of Restの旋律でご一緒に聴いてみましょう。

 


詩篇61篇2b-4節(英語歌詞は、the Scottish Psalter of 1650;旋律はLand of Rest)

 

2b  What time my heart is overwhelmed, and in perplexity,

    Do thou me lead unto the Rock that higher is than I.

(私の心が衰え果てるとき、私は地の果てから、あなたに呼ばわります。どうか、私の及びがたいほど高い岩の上に、私を導いてください。)

3  For thou hast for my refuge been a shelter by thy pow'r;

    And for defense against my foes, thou hast been a strong tow'r.

(まことに、あなたは私の避け所、敵に対して強いやぐらです。)

4  Within thy tabernacle I for ever will abide;

    And under covert of thy wings with confidence me hide.

(私は、あなたの幕屋に、いつまでも住み、御翼の陰に、身を避けたいのです。)

ーーーーー 

詩篇歌のすばらしい点は、それが原典に忠実な逐語訳であるばかりでなく、私たちが歌うことができるよう、その点を考慮し、リズムと旋律をもって訳がなされていることです。そして旋律を伴った神のことばが私たちの魂や心の中に宿りはじめる時、次第に、私たちのみる被造世界もまた、天的な旋律と調和をもった神の作品でありメロディーであることに霊の目が開かれていくようになります。

 

皆さんはアメージング・グレースという賛美歌のメロディーをよくご存知だと思います。実は、このアメージング・グレイスの旋律を用いた詩篇歌もあるんです。

 

詩篇107篇10-16節(英語歌詞は、the Scottish Psalter of 1650,Tune: Amazing Grace)

 

 

10  Such as shut up in darkness deep, and in death's shade abide,

    Whom strongly hath affliction bound, and irons fast have tried:

(やみと死の陰に座す者、悩みと鉄のかせとに縛られている者、)

11  Because against the words of God, they wrought rebelliously,

    And they the counsel did contemn of him that is most High:

(彼らは、神のことばに逆らい、いと高き方のさとしを侮ったのである。)

12  Their heart he did bring down with grief, they fell, no help could have.

(それゆえ主は苦役をもって彼らの心を低くされた。彼らはよろけたが、だれも助けなかった。)

13  In trouble then they cried to God, he them from straits did save.

(この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救われた。)

14   He out of darkness did them bring, and from death's shade them take;

These bands, wherewith they had been bound,asunder quite he brake.

(主は彼らをやみと死の陰から連れ出し、彼らのかせを打ち砕かれた。)

15  O that men to the Lord would give praise for his goodness then,

    And for his works of wonder done unto the sons of men!

(彼らは、主の恵みと、人の子らへの奇しいわざを主に感謝せよ。)

16  Because the mighty gates of brass in pieces he did tear,

    By him in sunder also cut the bars of iron were.

(まことに主は青銅のとびらを打ち砕き、鉄のかんぬきを粉々に砕かれた。)

ーーーーー 

さらにまた、このTuneというのは、私たちが自由に選び、また新しく造り出していくことができるのです。それゆえに、例えば、先ほどの詩篇107篇10-16節を、Morvenという別の旋律で歌っている教会もあります。そちらの賛美もご一緒に聴いてみることにしましょう。

 


詩篇107篇10-16節(英語歌詞は、Sing Psalms, 2003, Tune: Morven)

 

10 Some sat in darkness and in gloom, in chains of iron held;

(やみと死の陰に座す者、悩みと鉄のかせとに縛られている者、)

11 They scorned the ways of God Most High, against his words rebelled.

(彼らは、神のことばに逆らい、いと高き方のさとしを侮ったのである。)

12 And so he made them labour hard in bitterness and shame.

They stumbled, and they could not rise; to help them no one came.

(それゆえ主は苦役をもって彼らの心を低くされた。彼らはよろけたが、だれも助けなかった。)

13 Then to the LORD they cried for help; he saved them from their doom.

(この苦しみのときに、彼らが主に向かって叫ぶと、主は彼らを苦悩から救われた。) 

14 He broke away their cruel chains and brought them out of gloom.

(主は彼らをやみと死の陰から連れ出し、彼らのかせを打ち砕かれた。)

15 So let them thank him for his love, the deeds which he achieves—

(彼らは、主の恵みと、人の子らへの奇しいわざを主に感謝せよ。)

16 Because he breaks down gates of bronze and iron bars he cleaves.

(まことに主は青銅のとびらを打ち砕き、鉄のかんぬきを粉々に砕かれた。)

 

ーーーーーー

詩篇歌の世界は、森林の散策コースに似ていると思います。最初は勝手が良く分からず、どこから始めていいものやら戸惑うかもしれませんが、一度、中に入ってみると、後は、道しるべを頼りに、自分でどんどん探索していくことができるようになります。

 

それだけではありません。その途中、私たちは思わぬ絶景に息を飲んだり、清涼なる小川の水でリフレッシュしたり、そこに生息するさまざまな植物の美しさに感動したりします。

 

神の森林の中で起こることは、神と人の内的交わり、霊とまことによる礼拝の内実です。いつもつながっているように見えるのにいつも不安でならない現代社会全体が交わりを求めて呻いています。交わりの根源である神礼拝への扉が、苦しみ叫ぶすべての魂に開かれますように。永遠に不朽なる詩篇歌の旋律が、渇いた魂の部屋を満たし、彼の心を天の聖所へと向かわしめますように。主イエス・キリストの御名によって。