ついにこの世をあとに!
この世の盃(さかずき)はこなごなに砕かれました。
岸をはなれた小舟のなかから
遠い岸辺が、薄明かりの中に見えます。
路なき海原に囲まれ、
これからは、ただ希望のみがわが財産です。
長い長いあいだたじろぎ、悩みの日々に熟慮したことを、
私はついに敢行しました。
わが巡礼の足が永遠の祖国をみいだすまで、
もうけっして陸地を踏むこともありません。
こののち、月桂樹の枝はわたしのために花咲かず、
かしわの冠が私の額を飾ることはありません。
この世のすぎゆく努力はすべて虚しいのです。
おお主よ、私のもとめるのは永遠の冠のみです。
あのたなびく霧ははたして岸辺でしょうか。
この荒海のなかに行く手が見い出せるのでしょうか。
そして暗い旅路ののちに、聖なる都を見い出せるのでしょうか。
ああ、いかにつらい苦難の路であろうとも、私は進みます。
いざさらば!私を生んだ陸地よ。
苦しみは短く、汝の喜びは永遠なのです。