【前篇】からのつづきです。
カール・ユングとMBTI性格テスト(Myers-Briggs Type Indicator)の相関性
神秘主義のための枠組み
「視覚化」に関するカール・ユングの教えは、インナーヒーリング運動だけでなく、キリスト教会内の心理学的神秘主義の蔓延のフレームワークとなっています。
そして、現在、多くのキリスト教教師、牧師、祭司たちがイエスを視覚化するためのテクニックを教会内に普及させようとしていますが、大半の人々はその教えの源についてほとんど知らない状態にあると思われます。
1970年代から80年代にかけ、(インナーヒーリングの教師たちに加え)神秘主義的視覚化の教えは、モートン・ケルシー(Morton Kelsey,聖公会司祭)、リチャード・フォスター(Richard Foster, クウェーカー)、マーク・ヴァークラー(Mark Virkler, カリスマ派)らの著書を通してキリスト教会に広まりました。モートン・ケルシーは、厖大な数の著書の中で、「キリスト教神学が、ユング思想と統合可能である」ということを述べています。
また元ノートルダム大教授であるケルシーは、カリフォルニア州パサデナにあるフラー神学校でもセミナーを開きました。また彼は、多くのカリスマ派指導者、カトリック、ルター派のラリー・クリステンセン(Larry Christensen)、ビンヤード・フェローシップの指導者ジョン・ウィンバー(John Wimber)など広範囲に渡る人々に影響を与えています。
(引用元)
ケルシーは、「あらゆる宗教および神話的内容は、無意識の深層内に見いだされ、視覚化ないしは積極的想像は、その無意識への橋渡しである」というユング派の前提に基づき、神とコンタクトをとるべく、瞑想的に変容した意識状態の中に入っていくよう、クリスチャンたちに教えを説いています。
モートン・ケルシーの著書『夢―神に聴く通り道』は、2006年、カトリックのサンパウロ出版社から発行されました。
リチャード・フォスター(Richard Foster)
1978年、クウェーカーのリチャード・J・フォスターの著書「Celebration of Discipline(訓練の祝い)」はベストセラーになり、映画化もされました。
この著書の中で、フォスターはインナーヒーリング体験を奨励しており、「私はこの体験をアグネス・サンフォードから学びました」(p137)と書いています。
彼はまた、聖書の物語を視覚化することや、聖書の出来事の中における積極的な参加者となることを勧めています。これは彼の言葉によれば、「この出来事の中であなたは生けるキリストに実際に出会うことができるのです。そして主の御声によって語りかけられ、主の癒しの力に触れられるのです。これは単なる想像を働かせる訓練以上のものであり得ます。そうです。これは真の対峙ともなり得るのです。イエス・キリストは実際にあなたを訪れてくださるのです。」(p26)
日本キリスト教団出版局から2006年発行されたリチャード・フォスター著『スピリチュアリティ成長への道』
マーク・ヴァークラー(Mark Virkler)
1986年、当時、ペンテコスステ聖書大学の教師であったマーク・ヴァークラー(Mark Virkler)は、「Dialogue with God(神との対話)」という本を出版しました。
ヴァークラーはこの本の中で――ほとんど弁証的な態度で――公然と、自分がリベラル派の聖公会祭司モートン・ケルシーから重大な影響を受けてきたこと、特にケルシーの著書「The Other Side of Silence(沈黙の別の側面)」からかなりの影響を受けたことを告白しています。
彼は想像を絶するほどの悪質な解釈メソッドを用い、聖書的真理の上に、自分の瞑想的テクニックを築こうとしています。また彼は、イエスを視覚化し、イエスに話しかけ、イエスの御声を聞き、知恵を受けるべく、クリスチャンに、ニューエイジのメソッドである「センターリングの祈り」を教えています。
イエスはどのようにして私たちの所に来られるのでしょうか?
イエスはご自身の御言葉とサクラメントの中で私たちに出会ってくださると約束してくださっています。そして主はそれらを通して私たちの所に来てくださるのであって、オカルトに味付された「意識の変容状態」によって起動する「瞑想的視覚化テクニック」を通してではありません。
使徒パウロは、私たちがイエスを上げたり、引き降ろしたりする必要はないこと、「みことばはあなたの近くにある。あなたの口にあり、あなたの心にある」(ローマ10:8)と明確に述べています。マルティン・ルターは、「神の御言葉という媒体なしに私たちの所にやってくる霊は皆、悪魔によるものである!」と言っています。
聖書が、みことばとサクラメントを通してイエスが私たちの所に来てくださると教えているのなら、冒頭のような「視覚化」を通してイエスとコンタクトを取っていると主張しているクリスチャンたちのことを一体どのように考えればいいのでしょうか。
もしも、あなたが意識の変容状態によって誘発される「視覚化」のテクニックを研究するなら、いわゆる「キリスト教バージョン」の視覚化テクは、ニューエイジのオカルトバージョンと同じものであることにまもなくあなたは気づくことでしょう。
カール・ユングが彼の霊的導き役である霊「フィレモン」と交信をするに当たって用いた方法論は、ケルシー、フォスター、ヴァークラーらの説く、「イエスとの交信をもたらすための方法論」と事実上、同じです。
それゆえ、視覚化の中で交わった「イエス」というのは、「別のイエス」つまり、悪魔的人格化であるか、良くても、人間の想像が生み出した虚構のイエスだと結論付けざるを得ません。
ーおわりー
●このテーマについてさらに考察を深めたい方へ
カール・ユングについて
ーDavid Cloud, Carl Jung (here)
ーWho's Driving the Purpose Driven Church? chapter 11. "Personality Profiling." (サドルバック教会リック・ウォーレン師のSHAPEプログラムと、ユング心理学との関係についての考察 here)
ーRev.Hird, CARL JUNG, NEO-GNOSTICISM, & THE MBTI(聖公会の教役者の方が書いた検証記事。①カール・ユングと、②ネオ・グノーシス主義、および③MBTI性格テスト、この三者の相関関係を詳説しています。here)
ー福音派とカリスマ派の境界線 村上密牧師Blog(ココ)
アグネス・サンフォードの教えに関して
ーBob DeWaay, Healing of Memories or Cleansing of the Conscience?(here)
ーDave Hunt, What's Wrong with Inner Healing? (here)
ーDave Hunt, Occult Invasion, Part 28: The Inner Secrets of Inner Healing (here)
ーPastor Alec Taylor, The Healing Theology of Agnes Sanford (here)
ーDavid Cloud, Agnes Sanford (here)
ーABUSING MEMORY: The Healing Theology of Agnes Sanford by Dr. Jane Gumprecht: reviewed by Martin & Deidre Bobgan (here)
インナーヒーリング一般に関して
ーおかしなペンテコステ信仰:ペンテコステ信仰につきまとう問題点をペンテコステ信仰の内部から論じます。(アッセンブリーズ・オブ・ゴッド西九州伝道所・佐々木正明師執筆によるインナーヒーリング検証 ココ)
ー「インナーヒーリング」に見られる自分第一主義(ココ)
ーピーター・ワグナーと「後の雨運動」村上密牧師Blog(ココ)
視覚化(visualization)に関して
ーにせ預言者に気をつけろ3 村上密牧師blog(ヨイド純福音教会チョーヨンギ氏の『第四次元』:視覚化の教え ココ)
ーJohn Weldon and John Ankerberg, VISUALIZATION: God-Given Power or New Age Danger?(1)←視覚化に関する非常に詳細な検証記事 (here)