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巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

「ローマ16:7のユニアは女使徒でした。ですから、初代教会の初めより、女性にも権威ある地位が与えられていたのです。」という主張はどうでしょうか。【後篇】

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  John Piper and Wayne Grudem, 50 Crucial Questions About Manhood and Womanhood | Desiring God, 2016

前篇からのつづきです。)

 

(2)ユニア(ス)は使徒だったのではないでしょうか。

これはかなりの割合であり得ないことだと言っていいでしょう。文法的に言えば、「使徒の間によく知られている(“of note among the apostles”)」というRSV訳は、使徒たちがアンドロニコとユニア(ス)を高く評価していたと捉えることができると思います。(*ESV訳「使徒たちよく知られている(“well known to the apostles”)」は、詳細に及ぶ文法研究を基にした最も確実性の高い訳だと考えられます。)

 

ギリシャ語の構造では、形容詞 episemos(=良く知られている, επισημος)は、「使徒たち」に対する与格表現(εν τοις αποστολοις)と共に用いられています。広範囲に渡る、聖書外ギリシャ語諸文献を研究したミッシェル・ブーラー(Michael Burer)は、論稿の中で、次のことを示しました。

 

1)人が与格の形で記されている時にはほとんと常に、この文構造は「誰かに対してよく知られている(“well known to”)」という意味である。

2)それに対し、誰かがある所属グループ「の間でよく知られている」時には、ギリシャの著述家たちは通常、属格形を用いている。

 

*この論文をお読みになりたい方は、Michael Burer, “Ἐπίσημοι ἐν τοῖς ἀποστόλοις in Rom 16:7 as ‘Well Known to the Apostles’: Further Defense and New Evidence,” JETS 58, no. 4 (2015): 731–55 (here)をクリックしてください。

 

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Michael H. Burer(ダラス神学校新約学准教授):ブーラー氏は大学職に就く前、Bible.orgの編集者、及びNET Bibleの准ディレクターとして長年働いていました。上記の論文に先立つ、2001年には、ダニエル・ウォーレス博士との共同執筆で、以下の論文を発表しました。Michael H. Burer and Daniel B. Wallace, “Was Junia Really an Apostle? A Re-examination of Rom 16.7,” NTS 47 (2001) 76–91.(here)

 

従って、彼ら自身は使徒ではなかったということが言えると思います。他方、アンドロニコとユニア(ス)は、パウロ以前にすでにクリスチャンであったわけですから(7節)、「使徒たちによく知られている」とパウロが言った時、彼の念頭にあったのはまさにこの事――つまり、自分がリーチする以前にすでに彼らが堅実な主の働きをしていたこと――だったのかもしれません。彼らは実際、本当にパウロの回心以前にすでに、使徒たちによく知られていたのです。

 

(3)初代教会で、女性に非常に権威ある地位が与えられていたのではないでしょうか。

おそらく違うでしょう。新約聖書の中で、「使徒(αποστολος, apostle)」という語は、異なるレベルの権威にあるキリストのしもべたちを指す語です。黙示録21:14では、「小羊の十二使徒の十二の名(δώδεκα ὀνόματα τῶν δώδεκα ἀποστόλων τοῦ Ἀρνίου.)」と言及してあります。(マタイ19:28、使徒1:15-26も参照。)

 

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十二使徒は、イエスの復活の証人としても特別の役割を果たしていました。そして実際、パウロも、自分自身そういった(特権ある使徒たちの)群れに含まれるによしとされていることを訴えるべく、復活したキリストを実際に見、そのキリストによって召されたことを強調しています。(1コリント9:1-2、ガラ1:1、12)

 

そして、この特別な内輪グループにもっとも身近な存在だったのは、パウロの宣教同労者たちでした。――バルナバ(使徒14:14)、シルワノとテモテ(1テサ2:6)、それから主の兄弟であるヤコブ(ガラ1:19)、それからおそらく他の何人かだったでしょう(1コリ15:7)。

 

最後に、使徒(アポストロス, apostolos)という語は、広義では「使者、メッセンジャー」という意味で用いられています。例えば、ピリピ2:25のエパフロデト、2コリント8:23の「彼らは諸教会の使者」は、直訳ではアポストロス(使徒)です。

 

ピリピ2:25

しかし、私の兄弟、同労者、戦友、またあなたがたの使者として私の窮乏のときに仕えてくれた人エパフロデトは、あなたがたのところに送らねばならないと思っています。(新改訳)

ἀναγκαῖον δὲ ἡγησάμην Ἐπαφρόδιτον τὸν ἀδελφὸν καὶ συνεργὸν καὶ συνστρατιώτην μου, ὑμῶν δὲ ἀπόστολον καὶ λειτουργὸν τῆς χρείας μου, πέμψαι πρὸς ὑμᾶς. (Nestle GNT 1904)

*尚、新改訳聖書の註の欄には、*直訳「使徒」ギリシヤ語「アポストロス」と記載されています。ご確認ください。

 

2コリント8:23

テトスについて言えば、彼は私の仲間で、あなたがたの間では私の同労者です。兄弟たちについて言えば、彼らは諸教会の使者、キリストの栄光です。

εἴτε ὑπὲρ Τίτου, κοινωνὸς ἐμὸς καὶ εἰς ὑμᾶς συνεργός· εἴτε ἀδελφοὶ ἡμῶν, ἀπόστολοι ἐκκλησιῶν, δόξα Χριστοῦ.( Nestle GNT 1904)

*ここの節の下の欄にも、直訳「使徒」と註が打ってあります(新改訳聖書)。

 

訳者注:上記の説明のさらなる裏付けとして、織田昭先生のギリシャ語辞典 "apostolos"定義の項を引用します。

αποστολος, ο (<αποστελλω, 遣わす):字義は~職権を委ねられて遣わされた者;古典では「遠征隊、艦隊」の意味に用いた。

使者 (特に遣わした者の権威と、委ねられた使命をもって)派遣された人、使節、全権大使;ヘブル3:1ではイエスご自身を「全権」αποστολοςの名で呼んでいる。

使徒(キリストが自ら選んだ福音書の使徒、パウロ書簡と使徒言行録が呼ぶ意味での使徒)。『新約聖書ギリシア語小辞典』より)

 

従って、たとえアンドロニコとユニア(ス)が、ある種の字義において「使徒たち」だったとしても、彼らはおそらく、巡回伝道の働きに従事していた、こういう三番目のグループに属する人たちだったのではないかと思われます。また、もしユニア(ス)が女性だったのなら、その場合、この人は、――ご主人と共に使徒パウロに同伴し、少なくともある期間、共に宣教の旅をしていたプリスカと同じような範疇に入るかもしれません(使徒18:18)。

 

働きそれ自体は重要だったかもしれませんが、そうだからといって、必ずしもパウロと同じような「諸教会に対して権威をもつ統治者」としてのカテゴリーに入るかといったら、そうではありません(2コリ10:8、13:10)。

 

関連VTR(Source: http://www.gotquestions.org