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巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

「当時のエペソの女性たちは偽りの教えを説いており、1テモテ2:12はその歴史的文脈で解釈されなければなりません。ですから、この聖句内容は、今日の教会に一般化して適用すべきではなく、従って、女性も牧師になれるのです」という主張についての応答【その2】

Wayne Grudem, Evangelical Feminism and Biblical Truth, chapter 8

 

対等主義者側の主張

当時エペソにいた女性たちは、偽りの教えを説き教えていました。。そして、それが理由で、パウロは、1テモテ2:11-15で、女性たちが聖書を説き教えることを禁じているのです。しかし、この聖句は、あくまで、その当時の特定状況下で出されたものです。ですから、今日を生きる私たちにとって、それは普遍的には適用されません。

 

これは対等主義の方々がよく唱える説です。リチャード&キャサリン・クローガーは、当時エペソにいた女性たちが、偽りの教えーおそらくはグノーシス主義もしくは原始グノーシス主義に関連する教えーを説いていたと主張して、次のように言っています。

 

「私たちは仮説というのは次のような可能性を含んだものです。偽りの教師たちというのは実際、グノーシス主義者、原始グノーシス主義者、もしくは非常にグノーシス主義に類似した神話にかかわる諸集団だったのです、、偽りの教えに関わっていたのは、男女共であり、そして女性たちは、御言葉に矛盾する作り話をしていたのです。」 R.and C. Kroeger, I Suffer Not a Woman (1992), 65-66.

 

シンディー・ジェイコブズは、著書 Women of Destiny (1998, p 240-41)の中で、この「グノーシス異端説」に賛同の意を示していますが、彼女が拠り所としているのは、ただこのクローガーの意見だけです。

 

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  J・リー・グラディー(J. Lee Grady)も, 著書『Twenty-Five Tough Questions About Women and the Church』 (2003)の中で、クローガーの説に賛同し、次のように言っています。

 「グノーシス主義者たちは、『エバがアダムよりも先に造られた』という観念をでっち上げたのです。女性の偽教師が一人か二人、エペソの教会に侵入し、この忌まわしい教えを広めていた可能性があります」(144)。

 サラ・サマーも著書『Men and Women in the Church』(2003)の中で、このグノーシス異端説を支持し、こう述べています。「おそらく、もっとも狡猾なことは、偽教師たちがーサタンのようにー御言葉を歪曲しつつ、『エバが最初に造られたのであり、エバは騙されなかった』と嘘言を吐いていたのでしょう」(259)。

 グノーシス主義というのは、初期キリスト教期の異端であり(AD2世紀に発生)、この主義の人たちは、「救いは、隠された知識(gr: gnosis)を通して来るのであり、被造された事象は悪である」と説いていました。そしてグノーシス主義者たちは、イエスの人性を否定していました。)

 

クレイグ・キーナーは次のように言っています。「エペソでの偽りの教えの大半は、教会の中にいた女性たちを通し広められていた、、、おそらく、パウロは彼女たちに学ばせたかったのかもしれない。そうすれば、彼女たちが〔きちんとした教えを〕教えられるようになるからと」Keener, Paul, Women and Wives 1992, p111-12

 

また、ゴードン・フィー(Gordon Fee)は、こう書いています(1テモテ2:12に関して)。

 

「おそらく、彼女たちのうちの何人かは偽りの教師たちによって、ひどく騙されていたのかもしれない。こういった偽教師たちは特に旧約聖書を誤用していたのです、、権威(authority)と訳されている語は、新約聖書中、ここにしか登場していません。そして、この語には、『"to domineer,” 威張り散らす、横柄にふるまう、独裁的に支配する、しいたげる、圧制する、暴威をふるう、牛耳る』という意味合いがあります。文脈から言って、おそらくこの語には、ー偽教師たちの誤った教えや推論を広めるというー、当時の女性たちがやっていた行為のことが反映されているのでしょう。従って、この語は、「教えに対する禁止」ということと密接に関連づけて理解すべきです。」Fee, 1 and 2 Timothy, Titus (1998), 73.

 

それから、J・リー・グラディーは、次のように述べています。

 

「1テモテ1:3で、『ある人たち』と訳されているギリシャ語は、ギリシャ語の不定代名詞tisi(τισι)です。不定代名詞には性別がありません。ですからパウロは、「≪ある人々≫が違った教えを・・・」と言っているのです。1テモテの後半に入ると、違った教えや空想話をしていた人々の中に女性たちが含まれていたことが明らかになります。1テモテへの手紙全体が、女性たちによって行われていた非聖書的な教えを矯正することを主要な目的として書かれていたのです。」Grady, Ten Lies (2000), 57.

 

Perriman, Speaking of Women (1998), 141-2 も参照のこと。それから、ハワード・マーシャルも1テモテ2:12の聖句の背後には、「ある女性たちによって行なわれていたある特定の偽りの教えがあります」と書いています(Marshall, A Critical and Exegetical Commentary on the Pastoral Epistles, ICC [Edinburgh: T&T Clark, 1999], 458).

 

またドン・ウィリアムは、「偽りの教えをしていた人々のうち幾人かは女性だったのでしょうか。きっとそうでしょう」と言っています。Williams, The Apostle Paul and Women in the Church (1979), 111

 

回答1.

名前の挙げられているエペソの偽教師たちは全員、男性であり、女性ではありません。

 

エペソ教会にいた偽教師たちについて言及されている箇所は三ヶ所ありますが、三ヶ所ともすべて、-女性ではなくー男性のことが挙げられています。

 

1.1テモテ1:19-20

「ある人たちは、正しい良心を捨てて、信仰の破船に会いました。その中には、ヒメナオ(Υμεναιος)とアレキサンデル(Αλεξανδρος)がいます。私は、彼らをサタンに引き渡しました。それは、神をけがしてはならないことを、彼らに学ばせるためです。

 

2.2テモテ2:17-18

「彼らの話は癌のように広がるのです。ヒメナオ(Υμεναιος)とピレト(Φιλητος)はその仲間です。彼らは真理からはずれてしまい、復活がすでに起こったと言って、ある人々の信仰をくつがえしているのです。

 

3.使徒20:30

 ここの聖句でパウロは、エペソ教会の長老たちに警告しつつ、将来、「あなたがた自身の中からも、いろいろ曲がったことを語って、弟子たちを自分のほうに引き込もうとする者たち(ανδρες, "men")が起こるでしょう。」と言っています。

 ここでパウロは、明確にaner(複:andres)という語を用いています。この語は、一般的な「人々」ではなく、「複数の男性たち」を指し示す語です。そしてパウロはエペソ教会の長老たちにこれを語っていますが、その長老たちは皆、男性でした。彼は、こういった偽教師たちが、「あなたがた自身の中から」起こるだろうと彼らに言っているのです。

 

ですから、エペソにおいて誰が具体的に偽教師であったか(もしくは、将来的にそうなるか)を特定する聖書箇所は全部で三つあり、三ヶ所とも、そこで名前を挙げられている偽教師たちは、女性たちではなく、男性たちでした。

 

クローガーは、「ヒメナオ、アレキサンデル、ピレト」の名前を出した後、それらの名前が男性であるということ自体には異議を唱えていません。しかし、その後、彼らは次のような文章をつけ加えています。

 「そういう風に異なった教えを説いていた個々人のうちの、少なくとも一人は、女性だったに違いないと私たちは考えます」(59-60)。

 しかし彼らが主張したいのが、「ヒメナオ、アレキサンデル、ピレトという三人の内の一人が女性」ということなのか、その辺りは不明瞭で、その後も、「三人の内の一人が女性である」という主張を根拠づける議論は出てきていません。(この三人の名称は、いずれも、ギリシャ語原典で、男性形で書かれています。)

 おそらくクローガーが主張したかったのは、エペソで偽りの教えを説いていたこの三人の他に、一人か二人の女性たちも同伴していたという事だと思われます。しかしながら、実際、聖書の中で挙げられているのは三人の男性の名であって、女性ではないという事実自体は動きません。そして、クローガーは、「その中にいた女性」についての自らの主張を裏付ける論拠をなにも提示していません。

 

シンディー・ジェイコブズは、こういったクローガーの主張を取り損ない、誤解したまま、次のように書いています。「クローガーは、『少なくとも、その中の一人は女性であった』と言っており、1テモテ2:12において、〔パウロは〕、教会の中に深刻な問題を生じさせていた『異端の教え』を説くことをその女性に禁じていたのです。」(Jacobs, Women of Destiny, 235)。

 

しかし、彼ら三人の名前は、ギリシャ語原典ですべて男性形で書かれており、全員、男性であることを示しています