巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

東方の光(Orientale Lumen)

痛み、苦しみの意味(セラフィム・ローズ修道士)

Fr. Seraphim Rose, Father Sraphim Rose: His Life and Works(引用翻訳) 人はなぜ、快楽や幸福ではなく、むしろ痛みや苦しみを通し、事を学ぶのだろう。 それは、快楽や幸福がこの世に与えられたもので満足するよう人を慣らすのに対し、痛みや苦しみは、―…

悩める神学生たちへの励ましの手紙――現代正教神学の諸潮流をどう捉えればいいのか?【マシュー・ベーカー神父遺稿集】

Fr. Matthew Baker (♰2015), Ways of Modern Orthodox Theology, Letter to Students of St Tikhon's Seminary, September 20, 2014, in Faith Seeking Understanding (2021) 拙訳 確かに考えさせられることが多いですね。 聖伝についての説明を誰かから聞く…

三位一体と聖伝(Tradition)(by セラフィム・ハミルトン師)

出典 Seraphim Hamilton, Trinity and Tradition, Apologia Pro Ortho Doxa (拙訳) スタニロエ神父は、超自然的な啓示の三つの源――教会、聖書、聖伝――について語っています。私はこれらを御父、御子、御霊(聖神)と関連づけたいと思います。 教会は、聖書…

フェミニズムのキリスト論(by ペリー・ロビンソン師)

出典 目次 はじめに ディアコネス(deaconesses)と女性助祭(female deacons) 「機能(function)」や「能力」に訴える議論 かしら性(headship) 「ジェンダー」と「性別」 「なぜセオトコス(聖母マリア)は男性ではあり得なかったのか」 司祭職の男性限…

祭司職と男性性(masculinity)(by ステファン・デ・ヤング神父)

Fr. Stephen De Young, Priesthood and Masculinity, The Whole Counsel, 2018(拙訳) 聖書における祭司職(priesthood)のテーマは、最初期の段階から始まっています。 創世記の最初の11章は、周囲の国々の文献や伝統を大いに参考にしていますが、そこに見…

信仰義認について――正教、カトリック、福音主義クリスチャンそれぞれの視点(by セラフィム・ハミルトン師他)

目次 信仰義認について(by セラフィム・ハミルトン師) 一般的福音主義の義認理解 正教の義認理解 いかにして人は義とされるのだろう 「信仰」と「行ない」の関係 N・T・ライトの信仰義認見解(by セラフィム・ハミルトン師) 代償・身代わり(Substitution…

オプティナ修道院聖師父たちの朝の祈り

Προσευχὴ τῶν πατέρων τῆς Ὂπτινα(拙訳) おお主よ。今日というこの日に自分にもたらされるあらゆる事を、霊的静けさをもって受け止めることができますように。あなたの聖なるみこころに全く自分を明け渡すことができますように。

わが魂は主を渇望し、涙の中でこの御方を慕い求めます。(アトス山の長老聖シルアン)

Archimandrite Sophrony, St Silouan the Athonite, Part II. The Writings of Staretz Silouan(一部拙訳) わが魂は主を渇望し、涙の中でこの御方を慕い求めます。 ああ、汝を求めること以外にいったい何ができるというのでしょう。なぜなら汝がまず私を求…

驚くばかりの恵みなりき――「恵み」再発見の旅

出典 昨日の説教箇所は第二コリント12章の「わたしの恵みはあなたに十分である」という箇所でした。私の通っている修道会所属のギリシア正教会では、説教は領聖(聖体拝領、聖餐)の直前になされます。

キリスト教会の〈普遍性〉へのたましいの欣求――「西方典礼正教(Western Orthodoxy)」「東方典礼カトリック」「聖公会継続派」

「キリスト教礼拝の歴史に通じている人なら誰であれ、西方典礼伝統の豊かさを否定することはできないだろう。特に、旧く敬虔なローマ典礼の豊かさを。」アレクサンダー・シュメーマン神父、東方正教会 *写真は「西方奉神礼教会/ 西方典礼正教(Western Rite…

東方キリスト教世界のベール理解と男女観――イコン神学の観点から――(by パトリック修道士)

Monk Patrick, Head Coverings, Energetic Procession, 2012 (拙訳) 聖パウロによると、男性および女性はそれぞれイコン的機能(iconic function)を帯びています。すなわち、男は神の似姿であり神の栄光の現われであり、女は男の栄光の現われであるという…

神の国の顕現(by トリフォン修道院長)

出典 Abbot Tryphon, Manifesting the Kingdom, The Morning Offering, 19 Oct, 2021(拙訳) 福音は、この世に神の国の到来を告げるようキリスト者に要求します。――政治的イデオロギーによってではなく、個々のキリスト者の自己変容によって。

祈りの東向性(アド・オリエンテム)の霊的意味

「私たちは皆、祈る際に東の方角(toward the East)を向いていますが、そうすることによって実は自分たちが古の故郷を再び憧憬し欣求しているということを自覚している人はわずかです。古の故郷――、そう、エデンを臨む「東」に植えられしパラダイスのことで…

宗教を語る上での3つの良い方法及び3つの悪い方法(ダミック神父&マイク牧師コラボ出演)

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世俗イコンと神の国のイコン―「ジェンダーレスファッション」にみる思想のかたち

ジェンダーレスファッション(出典)*写真に映っている人は男性。 先日、仲の良い友人が下の記事をシェアしてくれました。GU(ユニクロのカジュアルブランド)の新作発表会でジェンダーレスファッション(「性差のない」服装)が強力に打ち出され、201…

三位一体論「御父のモナルキア」教説にかんする優れたビデオ講義シリーズのご案内

「仮にズィズィウーラスの分析が正しいとするのなら、神的モナルキア*1に関する決定的重要性に関しなぜ正教がかくまで力点を置いているのかをよりよく理解できると思います。 それは、自然の必然(necessities)の上に存在する神の自由を保証し、無限にして…

見よ、真夜中に花婿がやって来る。(♪ Behold, the Bridegroom comes in the middle of the night)

マタイの福音書25章1-13節(十人のおとめの譬え) 25:1 「そこで、天の国は次のようにたとえられる。十人のおとめがそれぞれともし火を持って、花婿を迎えに出て行く。 2 そのうちの五人は愚かで、五人は賢かった。 3 愚かなおとめたちは、ともし火は…

聖グレゴリウス・パラマスとヘシュカスト論争(by マークス・プレステッド教授)

Marcus Plested on St Gregory Palamas and the Hesychast Controversy, 2021.(抄訳) 「結論を申し上げますと、(ポドスカルスキー見解に代表されるような)「理性の敗北」、(ロスキーらの見解に代表されるような)「アンチ・スコラ哲学的神秘神学の勝利…

アンチ西洋ポレミックスを克服し、西洋世界における福音宣教の使命を全うするために(by パトリック・カールディーン神父、正教会)

西方典礼正教会(写真) 目次 はじめに ポレミックス問題の認識 ポレミックスを介した西方伝統および自己概念の不正確な描写 ビザンティン・リスト;異なる形式、異なる信仰 福音宣教に負の影響を与えているアンチ西洋的な偏見 公同性・普遍性・カソリック性…

荒野にて

荒野にて 「国民教会(national church)」というものについて(by 聖ジョン・ヘンリー・ニューマン) 〈ローマ〉について(G・K・チェスタトン) ロシアと普遍教会ーーロシア民衆の「真の正教」及び、アンチ・カトリック神学者たちによる「疑似正教」につ…

東西の伝統派信者たちが取り組む必要のある諸課題と自省

出典 「他人の経験は、よしそれがいかに偉大なものであれ、何人にとっても完全に十分なものとはいえない。各人は、自分自身のために、本質的な問題、少なくとも自分にとって死活の問題の検討をし直さなければならない。私たちはそれゆえに、自分たちの真理の…

「あなたの内にある懐疑や葛藤の存在を否定してはいけない。そこから逃げてはならない。なぜなら、その場所にこそあなたの宝があるからである。」

出口がみえない。外から内から攻寄る懐疑。信仰と疑い。内なる精神の緊張。自身を含めたあらゆるものに対する失望。「教会」の崩壊。内部分裂。不安。恐れ。

磔像を彫る隠遁士

一人の隠遁者が 黙々とキリスト磔像を彫っている。 世界の果てで。 永遠の「今」を生き、 孤高の内に祈り、 神のうちに安らぐ。

「兄弟たちよ!教会の使徒的信仰を擁護すべく果敢に声を挙げてください。」――トボリスクの主教、殉教者聖エルモゲネスの書簡

出典 トボリスクの主教であり、ボルシェビキ政権により投獄され殺害された致命者聖エルモゲネス(1858-1918)。以下の文は、殉教前に信徒たちを激励すべくしたためた小冊子からの翻訳引用です。(出典)

♪ 漆黒の夜に(Svetogorskaya Lavra修道院の修道士たちによるクリスマス聖歌)

Svetogorskaya Lavra修道院の修道士たちによるクリスマスの聖歌詠唱(ウクライナ語)。歌詞の訳(私訳)は英語からの重訳です。

人間にとっての究極目的は何だろう?――『ピューリタンの祈り』と『フィロカリア』と

1 人生の目的問1 人間のおもな、最高の目的は、何であるか。答 人間のおもな、最高の目的は、神の栄光をあらわし、永遠に神を全く喜ぶことである。ウェストミンスター大教理問答 「神、至福な本性、すべての完全性を超える完全性、すべての善と美の創造主…

上にあるものを求め、天使たちと共に祈り、賛美する。

出典 さらに見ていると、御座と生き物と長老たちとのまわりに、多くの御使たちの声が上がるのを聞いた。その数は万の幾万倍、千の幾千倍もあって、大声で叫んでいた、「ほふられた小羊こそは、力と、富と、知恵と、勢いと、ほまれと、栄光と、さんびとを受け…

神の受肉、物質の聖化、イスラーム、イコン崇敬(ダマスコの聖イオアン)

ー ダマスコの聖イオアン(ヨアンネス;675-749) 「東方教会でヨアンネス〔=イオアン〕は何よりも三つの講話『聖画像破壊論者駁論*1』によって知られます。 この講話は彼の死後、聖画像破壊論者によるヒエレイア教会会議(754年)によって断罪されました。…

聖書神学は正教理解に有益!(by セラフィム・ハミルトン)【福音主義と東方正教の架け橋】

燃える柴(出エジプト記3章)。シナイ山のモーセとオディギートリアの三連祭壇画イコン。エジプトシナイ山、聖カテリーナ修道院蔵。出典 Seraphim Hamilton, Why Orthodoxy?, 2. The Scriptures come to life here. (拙訳) 聖書の無誤性に関し質問を受け…

カッパドキア教父たちと三位一体論

カッパドキア三教父 4世紀のキリスト教世界を混乱させたアリウス派論争の収拾に大きな役割を果たし、ニカイア信仰の確立に尽くしたギリシア教父たち。大バシレイオス、その弟ニッサのグレゴリオス、両者の友人ナジアンゾスのグレゴリオスの3人で、すべて小…