巡礼者の小道(Pursuing Veritas)

聖書の真理を愛し、歌い、どこまでも探求の旅をつづけたい。

神の受肉、物質の聖化、イスラーム、イコン崇敬(ダマスコの聖イオアン)

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ダマスコの聖イオアン(ヨアンネス;675-749)

 「東方教会でヨアンネス〔=イオアン〕は何よりも三つの講話『聖画像破壊論者駁論*1』によって知られます。

 

この講話は彼の死後、聖画像破壊論者によるヒエレイア教会会議(754年)によって断罪されました。しかし、これらの講話は、第7回公会議の第2ニカイア公会議(787年)に集まった東方教父がヨアンネスを復権し、尊者とした基本的な理由となりました。

*1:Contra imaginum calumniatores orationes tres

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聖書神学は正教理解に有益!(by セラフィム・ハミルトン)【福音主義と東方正教の架け橋】

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燃える柴(出エジプト記3章)。シナイ山のモーセとオディギートリアの三連祭壇画イコン。エジプトシナイ山、聖カテリーナ修道院蔵。出典

 

Seraphim Hamilton, Why Orthodoxy?, 2. The Scriptures come to life here. (拙訳)


聖書の無誤性に関し質問を受けたG・K・ビール教授(Gregory Beale、1949年 -*1.)は、次のように答えたそうです。「一般的な想像とは裏腹に、聖書テクストをより深く探求するべく推奨され迫られているのはむしろ無誤性信奉の聖書学者たちの方なのです」と。

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おおすべてを超越しておられる汝よ!(ナジアンゾスの聖グレゴリオス『教理詩』)

 

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出典

 

おおすべてを超越しておられる汝よ、
他のいかなる名でお呼びできるというのでしょう。
いかなる讃歌でもって汝のことを謳うことができるというのでしょう。

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カッパドキア教父たちと三位一体論

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カッパドキア三教父

4世紀のキリスト教世界を混乱させたアリウス派論争の収拾に大きな役割を果たし、ニカイア信仰の確立に尽くしたギリシア教父たち。大バシレイオス、その弟ニッサのグレゴリオス、両者の友人ナジアンゾスのグレゴリオスの3人で、すべて小アジアのカッパドキアの出身のため「カッパドキア三星」ともよばれる。アリウスが提起した問題、すなわち父なる神と子なるキリストとの関係は、ニカイア公会議(325)で、両者が同一実体であるとしていちおうの解決をみたはずであったが、その後約半世紀にわたって激しい論争が続いた。そこで、ギリシア古典の教養を身につけ、キリスト教神学にギリシア哲学の方法を導入したカッパドキア三教父は、アリウス派論争の調停者の役割を果たし、381年のコンスタンティノープル公会議で、ニカイア公会議の決定を確認する形で論争を終結させた。かくしてキリスト教の教義の根幹をなす三位一体論が完成した。(出典

 

目次

  • 坂口ふみ著『〈個〉の誕生 キリスト教教理をつくった人びと』岩波書店、1996年(谷 隆一郎氏書評、中世思想研究39号)
  • バシレイオスのウーシア - ヒュポスタシス論(土橋茂樹氏、中世思想研究 (51), 25-41, 2009)
    • Ⅰ バシレイオスとエウノミオス
      • 1.ウーシアとヒュポスタシス
      • 2.二つのエピノイア論
    • Ⅱ ホモイウーシオス(相似本質)期のバシレイオス
    • Ⅲ 『聖霊論』における力動的ウーシア論への展開
      • 1.プロティノスの影響
      • 2.共に数えられる三位格
    • おわりに

 

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共有された歴史の追憶と分裂の痛み、そして未来への希望――「宗教改革記念日」を前に

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目次

  • 思索メモ1
  • 思索メモ2
  • 思索メモ3
  • 思索メモ4
  • 思索メモ5
  • 思索メモ6
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「大いなるしるし」(黙12:1)――乙女マリア、身体のよみがえり、グノーシス主義、男女のセクシュアリティー(by マシュー・ベーカー神父)

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出典


Fr. Matthew Baker(♰2015), "A Great Sign" (Rev. 12:1): A Homily on the Dormition of the Theotokos, Aug.15, 2014(抄訳)生神女就寝祭の日に

 

また、大いなるしるしが天に現れた。ひとりの女が太陽を着て、足の下に月を踏み、その頭に十二の星の冠をかぶっていた。(黙示録12章1節)

 

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